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○○△△は店を覗いていたサラリーマンを半ば強引に店に引き入れてしまった。
最初は好みのタイプの顔だなと思っただけだったけど、すぐに目の下のクマが際立たせる生気のなさに気が付いた。
自分に吃驚して逃げるように去ろうとするその男をとっさに引き留めてしまったのは1年前の自分に酷く似ていたからだった。
彼は観音坂独歩というらしい。
「すいません、まだ内装途中で。ここどう、あ、やっぱりシャンプー台直で大丈夫ですよ。」
セット面の椅子にかけてたビニールをはずしたが、カウンセリングする必要がなかったのでそのままシャンプー台に座ってもらった。
「ハンガーまだ準備できてなくて、すいません、椅子に着せときますね。」
スーツのジャケットを預かると、
「いやもう全然大丈夫です!どこにでも置いといてください、すいません気を遣わせてしまって······」
と、逆に気を遣わせてしまった。ネクタイを緩めてもらって、タオルとクロスをつける。
「じゃあ後ろ倒しますねー。」
足元のボタンを踏むと自動で背もたれが倒れてくれるのだが、観音坂さんが「うぉっ」っと小さく悲鳴を上げた。「このタイプのは初めてですか?」と聞くと観音坂さんは恥ずかしそうに言った。
「いやー。実は美容室って来たことなくて···。学生の時は床屋さんでしたし、幼馴染みと一緒に住んでるんですけど、そいつが切ってくれるんですよ。」
温度を確認してシャンプーの前の余洗いをしていく。
「そうなんですね!その方器用なんですねぇ。このシャンプー台凄く良いやつで、寝てても首が痛くないでしょ?ランク落とすとずっと寝てるとしんどくなるんですよ。」
「全然痛くないです。ていうか、もう寝てしまいそうで···。」
「全然良いですよ!寝てください。」
シャンプーをしっかり泡立てて洗っていく。流すときに頭を持ち上げた時の重さで寝てしまったのが分かる。時間も時間だし、相当疲れてたんだな。
「お疲れ様でしたー。起こしますねー。」
顔にのせてあったフェイシャルガーゼをはずして声をかける。
「っうわー。完全に寝てました。すいません。」
「いえいえ、美容師は寝てもらえると嬉しいんですよ。気持ちいいって思ってもらえてるんだなって。」
乾かすためにセット面の方へ案内する。頭皮用のミストをつけて軽くマッサージしていく。
「シャンプーしてて思ったんですけど、凄い頭皮凝ってます。」
「えっ、頭皮って凝るんですね···。」
「ですね。血行が悪くなるので抜け毛薄毛の原因にもなったりします。目の疲れ、肩凝りも併発されてる方多いですよ。」
揉みほぐしていくと観音坂さんから「うおぉー。」と声が漏れる。
「···お仕事、きついですか?」
と聞くと観音坂さんは細めていた目をパッと開き言った。
「やっぱり○○さんから見てもやつれて見えますか?そうなんです、もう毎日毎日終電ギリギリで、クソ上司にいびられてて、まぁ効率悪くて営業成績も悪い俺のせいなんですけど、」
「そんなことないです!」
遮って言ってしまった。まだ出会って30分程しか経っていないが、自分には観音坂さんが仕事をさぼったり、手を抜いたりするような人には思えなかった。