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観音坂独歩は今日も終電ギリギリまで残業をしていた。
金曜日なので仕事帰りにさぞ楽しく飲んでらっしゃったんでしょうねというような奴らにイライラしたり、自分と同じような草臥れたサラリーマンにシンパシーを感じたりしながら電車に揺られていた。今日もハゲ課長に文句を言われ、営業先の病院の先生方には無理難題を言われ、もう疲れきっていた。
LINEを開くと数時間前に同居人の伊弉冉一二三から【どっぽちんおつおつー!夕飯はチャーハン卵スープサラダ🤩冷蔵庫に入ってるよ!明日は休みだからファイト🙌🏻】とメッセージが来ていて、地にめり込んでいた気持ちが地上までは上がってこれた。
駅を出て、ビールを飲みながら食べよう、ビールまだあったっけ、と思いながら歩いていると、道の脇の暗い裏路地を入ったすぐの辺りが明るくなっているのが気になって立ち止まる。
(こんなところに何かあったか?)
恐る恐る近づくとドアが開きっぱなしになっていて、どうやら開店前のお店らしく中には積まれた段ボールやビニールがかかったままの椅子等がある。
壁にはアンティーク調の大きな鏡が間隔を開けて横並びに2つ取り付けられている。どうやら美容室のようだ。
(こんな時間に作業しているなんて、大変だな。自分みたいに搾取されている人間がここにもいるのか······。)
ぼーっとお店のなかを見ていると奥から男が出てきてバッチリと目があってしまった。当たり前だ。かなり堂々と中を覗いていたのだから。ラフだがお洒落でスタイルも顔も良く苦手なタイプの人間だと独歩は判断した。男がこちらに向かって歩いて来るので
「っすすすすすいません!!怪しい者ではありません!!ちょっとききき気になってしまって!!しししし失礼いたしますっ!!」
と逃げようと背を向けたがパシッと手首を捕まれてしまった。心の中でひえぇー!と悲鳴を上げながら振り返ると
「お兄さん、今仕事帰りですか?」
と、イケメンが少し悲しそうな笑顔で言う。
「良かったらシャンプーしますよ。」