もがな
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「うぉっ!」
廊下の曲がり角で誰かにぶつかった。尻餅をついている相手をみると△△だった。
「僕たちよくぶつかるね。」
△△を起こそうと手を差し出すが様子がおかしい。俯いていた顔がこちらを向くとその整った顔から出るもの全部出てるんじゃないかと思うぐらい大洪水がおきていた。
「っどうしたの?」
背中を擦ってみるもなかなか嗚咽は止まりそうもない。なんとか立たせてあまり使われていない書庫へと連れ込んで、ゆっくりと事情を聞いてみることにした。
「良かったじゃない、両思いで。」
「・・・そう言う問題じゃないのです。」
なんとか消え入りそうな声でポツリポツリと話してくれた内容を要約すると、太子が△△に求愛してきたらしい。
「太子様はお優しいから、あんな・・・」
「じゃあ太子が軽薄にそういったことを口にする男だと?」
「そうではないです!・・・ですが、太子様はきちんとした方とお子をなさなければ・・・、それに、私みたいな身分のものが、太子様の寵愛を受けて良いはずがないじゃないですか・・・。」
少し落ち着いてきていたのにまた啜り泣きが始まる。
「△△くん」
△△の両肩に手を置いて、泣き腫らした目を正面から見つめると、美人は泣き顔もきれいだな、なんて場違いなことが頭を過る。
「2年前、気を付けてと見送った同僚が渡航中の事故で亡くなった。先の戦では知人も何人か亡くした。△△くんはまだ若いけど、人間なんて今日健康でも明日どうなってるか分からないんだよ。」
△△の目からぽろぽろと落ちる涙を拭う。
「△△くんの言ってることもよく分かる。でも、もし明日あのアホが自分で掘った落とし穴にでも落ちて死んだり、カレーの食べ過ぎで腹が裂けて死んだり、・・・暗殺されたりしたら、△△くん、後悔しない?自分も好きだって言えば良かったって思わない?」
今度は滝のように溢れ出てきたので、もう拭うのは諦めて両手で小さな顔を包み込んで、餅のような肌をむにむにと堪能してみる。
「僕が太子の様子見てくるから、それまでに泣き止んでね。僕からは何も言わないから、言いたいこと、ちゃんと考えておくんだよ。」