アドベントカレンダー
あと22日
夜、ケビンは突然目を覚ました。ゾンビがいる、とシックスセンスが動いていた。ヴィンセントがいたら「ゾンビって五感ちゃんと残ってるかも分からないのにシックスセンスって言うのかな」などと茶化しただろうが、ここにはケビンしかいない。
ケビンはできる限り静かに外に出て、うろついていたゾンビを力いっぱい殴りつけた。もうゾンビになっているので食われても困らない。嘘だ、怪我をするとネッドが心配するから怪我はしたくない。
数体のゾンビを殺したあと、のそのそと地下室の方にゾンビの亡骸を持ってきた。あとで食べる。今食べると起きたときにネッドに心配されるから、起きて報告するのだ。
ベッドに戻ろうとして何も考えずにネッドの部屋の扉を開けた。鍵はかかっていない。ネッドの部屋はずっと昔に入ったきりだった。ケビンは寝ているネッドのもとに来るとだらりと垂れた舌でネッドの生え際を舐めた。うぅん、とケビンが動いたがネッドは舐め続けた。味は全くしないのになぜか舐め続けていたかった。
* * *
朝、起きてみたら頭がどうにもぞわぞわする。貴重な水を使う訳には行かないのだがどうしても嫌で噴水の水を借りて頭を流した。
家の周りは何やら乱戦があったような血まみれの様子だった。放置していても特にいいことは無いのだがそれらを綺麗にするのも大変で全く手をつけていない。どうせいつかは死ぬ未来である。
家に帰ると首輪をつけて外に出られないようにしていたケビンが喜んで俺に近づこうとしてぐちゃり、と首輪を喉にしまらせた。痛々しい様子におそるおそる近づくとケビンはニコニコと笑ってこちらを見ている。3歳児の方が絶対にケビンより賢いと思った。
「昨日なにかしたのか?」
ケビンに聞いてもちゃんとした答えを得られたことがない。ぱくぱくと口を開いてはおはよう、と笑うだけだ。
「……腹の掃除は、まだ大丈夫かな」
排泄物などが出ない体になったゾンビは食べたものから栄養素を吸収できてもなぜか排泄物として外に行くことがない。ウイルスの関係なのかゾンビという設定のせいなのか。きっと体を腐らせようとするなにかが働いているのだろう。ケビンの腹をひらいて中身を取り出すのは何度やっても慣れるような気がしない作業だった。
食事は適当にとってきた缶詰やヴィンセントから流されたよく分からない食べ物を食べている。前にとある理由でゾンビの肉も食べたことがあるがネズミを食べた方がマシな味をしていた。
ケビンに今日もまたプレゼントをあげなければならない。だが思い出の品は意味がなさそうだった。じゃあやっぱりゾンビが欲しがるものを? ネッドにはそれも何だか嫌だった。ケビンは他のゾンビとは違う、と思いたかったのかもしれない。仕方がない。自分の体を与えてみるか。その時はものすごく簡単に自分の指を切り落とそうと思った。死んでもいいと思うことは自分の体さえも適当に扱うことだ。包丁を持ってきて小指を切り落とそうと構えたところ、ケビンは慌てた様子でネッドの腕にしがみついた。
「……ネッド?」
「ぉあ………。おぉ………」
寂しそうな声でケビンはネッドを見つめていた。
人間を与えてみてもケビンは全く喜ばなかった。
* * *
ネッドが自分の手を切ろうとした。分からないけどとても怖かった。おれの手なら切っても大丈夫。小指が欲しかったのかなっておれも切ろうとしたけどネッドが止めた。ものすごく焦った表情だった。
おれがネッドにやめてほしいことは、ネッドがおれにしてほしくないこと。おれでも分かることを、ネッドは分かってない。
夜、ケビンは突然目を覚ました。ゾンビがいる、とシックスセンスが動いていた。ヴィンセントがいたら「ゾンビって五感ちゃんと残ってるかも分からないのにシックスセンスって言うのかな」などと茶化しただろうが、ここにはケビンしかいない。
ケビンはできる限り静かに外に出て、うろついていたゾンビを力いっぱい殴りつけた。もうゾンビになっているので食われても困らない。嘘だ、怪我をするとネッドが心配するから怪我はしたくない。
数体のゾンビを殺したあと、のそのそと地下室の方にゾンビの亡骸を持ってきた。あとで食べる。今食べると起きたときにネッドに心配されるから、起きて報告するのだ。
ベッドに戻ろうとして何も考えずにネッドの部屋の扉を開けた。鍵はかかっていない。ネッドの部屋はずっと昔に入ったきりだった。ケビンは寝ているネッドのもとに来るとだらりと垂れた舌でネッドの生え際を舐めた。うぅん、とケビンが動いたがネッドは舐め続けた。味は全くしないのになぜか舐め続けていたかった。
* * *
朝、起きてみたら頭がどうにもぞわぞわする。貴重な水を使う訳には行かないのだがどうしても嫌で噴水の水を借りて頭を流した。
家の周りは何やら乱戦があったような血まみれの様子だった。放置していても特にいいことは無いのだがそれらを綺麗にするのも大変で全く手をつけていない。どうせいつかは死ぬ未来である。
家に帰ると首輪をつけて外に出られないようにしていたケビンが喜んで俺に近づこうとしてぐちゃり、と首輪を喉にしまらせた。痛々しい様子におそるおそる近づくとケビンはニコニコと笑ってこちらを見ている。3歳児の方が絶対にケビンより賢いと思った。
「昨日なにかしたのか?」
ケビンに聞いてもちゃんとした答えを得られたことがない。ぱくぱくと口を開いてはおはよう、と笑うだけだ。
「……腹の掃除は、まだ大丈夫かな」
排泄物などが出ない体になったゾンビは食べたものから栄養素を吸収できてもなぜか排泄物として外に行くことがない。ウイルスの関係なのかゾンビという設定のせいなのか。きっと体を腐らせようとするなにかが働いているのだろう。ケビンの腹をひらいて中身を取り出すのは何度やっても慣れるような気がしない作業だった。
食事は適当にとってきた缶詰やヴィンセントから流されたよく分からない食べ物を食べている。前にとある理由でゾンビの肉も食べたことがあるがネズミを食べた方がマシな味をしていた。
ケビンに今日もまたプレゼントをあげなければならない。だが思い出の品は意味がなさそうだった。じゃあやっぱりゾンビが欲しがるものを? ネッドにはそれも何だか嫌だった。ケビンは他のゾンビとは違う、と思いたかったのかもしれない。仕方がない。自分の体を与えてみるか。その時はものすごく簡単に自分の指を切り落とそうと思った。死んでもいいと思うことは自分の体さえも適当に扱うことだ。包丁を持ってきて小指を切り落とそうと構えたところ、ケビンは慌てた様子でネッドの腕にしがみついた。
「……ネッド?」
「ぉあ………。おぉ………」
寂しそうな声でケビンはネッドを見つめていた。
人間を与えてみてもケビンは全く喜ばなかった。
* * *
ネッドが自分の手を切ろうとした。分からないけどとても怖かった。おれの手なら切っても大丈夫。小指が欲しかったのかなっておれも切ろうとしたけどネッドが止めた。ものすごく焦った表情だった。
おれがネッドにやめてほしいことは、ネッドがおれにしてほしくないこと。おれでも分かることを、ネッドは分かってない。
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