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今日はハロウィンだった。私には特に影響のないイベントである。幼少期は近所や親戚の家を回ってお菓子を貰い、学生になれば友達とお菓子を交換したこともあった。大人になってからは、スーパーや街のポップでハロウィンを思い出すくらい縁の遠いイベントへとなってしまった。
ハロウィンだからといって仕事が休みになるわけでもない。今即興で仮装しろといわれてできるものは過労死したゾンビだと思う。
いつものように、コンビニへと入る。店内は案の定ハロウィンの飾りつけがされていた。ジャック・オー・ランタンにかこつけてカボチャのスイーツが多く置いてある。さらにカボチャ餡の餡まんがレジ横に今日一日限定商品のポップとともに並んでいた。それは美味しそう。
買う予定だった見切り品コーナーにあるお弁当を戻してかぼちゃまんを買いにレジへと向かう。籠の中にはかぼちゃプリンやかぼちゃサラダが入っている。
食べたいものを入れたはずだったのに、ハロウィンに浮かれている人みたくなってしまった。店内のポップにつられたのが丸わかりで恥ずかしい。
恥ずかしいのだけど、一度手に取った商品を戻す行為に気が引けてしまい、咄嗟にビターチョコレートが入ったお菓子を籠へ入れる。かぼちゃの中にあるビターチョコレートのお菓子がミスマッチだった。
レジにいたのはたまに夜勤務に入っている若い店員さん…なのだけれど、その頭にはなぜか魔法使いが被っていそうな帽子がのせられている。
真っ直ぐのびた長い髪と片目が隠れている髪型も相まって本物のように見えなくもないのだが、着ている服はコンビニ店員の服だ。顔と首から下のギャップがすごい。
ハロウィンだから、そういう季節感を大切にするために支給されたのだろうか。
「あ、かぼちゃまん一つお願いします」
「ハイ。…かぼちゃ好きなんですか」
「え、そう、ですね、好きです…」
私があんまりにもかぼちゃ商品を買っているからだろう、若い店員さんが無意識にフ、と笑いすぐ誤魔化すように顔を背けた。たまにこうやってレジをしてもらうけれど、今の表情はなかなかレアだと思う。
いつもすまし顔で大人っぽい印象が強かったが、さきほどの笑顔は年相応、素に近い笑い方なのではないか。そうだったら少し嬉しい。
それにしても、どこで手に入れたんだろうその帽子。安っぽい素材で作られたものではなく、 しっかりした生地に見える。
私の目線が帽子のほうへいっていたのに気づいたらしく店員さんが諦めたような、呆れたような声色で、「出勤したら今日一日被れっていわれたんで被ってるだけです」と言った。自発的に被るようには見えないので納得だった。
「ハロウィンですもんね」
「あと数時間で終わるんで、それまでの辛抱ですけど。…あ」
店員さんは店内を見渡し、私しかいないことを確認したあと「少し待っててもらっていいですか」と言う。
特に急ぐこともないので、疑問符を浮かべつつ頷けば、店員さんは裏へと引っ込んでいき、すぐに戻ってくる。
「これ貰ったんですけど、俺甘いの得意じゃないんでよかったらいりませんか」
店員さんが持ってきたのは、最近発売されたパンプキンラテだった。気になっていたものの、職場近くのコンビニでは見かけなかったものだった。
「いいんですか?」
「むしろ貰ってくれるとありがたいです」
「じゃあ、お言葉に甘えて…あ、じゃあこれあげます!」
店員さんから手渡されたコンビニの袋からビターチョコレートを取り出す。これならば甘いものでもないから、貰ってもきっと困らないだろう。
店員さんは切れ長の目を少しだけ開いて、目をパチパチとさせたあと、俯いて口元に手の甲をあてて笑いを隠した。
「俺がこれもらっちまったら、お客さんかぼちゃだらけになりますね」
「あ、確かに…」
「気づいてなかったんですか」
店員さんの顔は帽子と手でよく見えなかったけれど、くぐもった笑い声は止まっていなかった。あまり笑わない人だと思っていただけに、すごく新鮮な気分だ。
「でも、ハロウィンなんで!それにかぼちゃ好きだから大丈夫です!」
そういって胸をはる。全くもって自慢できることではない。
店員さんはまたフ、と笑って私が差し出したビターチョコレートを受け取った。
「ハロウィンですからね、有り難く貰っときます」
「はい!どうぞどうぞ!」
かぼちゃだらけになったコンビニのレジ袋を手に家へと帰る。コンビニをでる直前に若い店員さんのほうへ目をむけるとまだ少し笑っているように見えた。
今日はすごくレアなあの店員さんの顔を見ることが出来たからいい一日だった、終わりよければすべてよしだ。今日がハロウィンで良かった、と思う日はたぶん今日ぐらいだろう。
ハロウィンだからといって仕事が休みになるわけでもない。今即興で仮装しろといわれてできるものは過労死したゾンビだと思う。
いつものように、コンビニへと入る。店内は案の定ハロウィンの飾りつけがされていた。ジャック・オー・ランタンにかこつけてカボチャのスイーツが多く置いてある。さらにカボチャ餡の餡まんがレジ横に今日一日限定商品のポップとともに並んでいた。それは美味しそう。
買う予定だった見切り品コーナーにあるお弁当を戻してかぼちゃまんを買いにレジへと向かう。籠の中にはかぼちゃプリンやかぼちゃサラダが入っている。
食べたいものを入れたはずだったのに、ハロウィンに浮かれている人みたくなってしまった。店内のポップにつられたのが丸わかりで恥ずかしい。
恥ずかしいのだけど、一度手に取った商品を戻す行為に気が引けてしまい、咄嗟にビターチョコレートが入ったお菓子を籠へ入れる。かぼちゃの中にあるビターチョコレートのお菓子がミスマッチだった。
レジにいたのはたまに夜勤務に入っている若い店員さん…なのだけれど、その頭にはなぜか魔法使いが被っていそうな帽子がのせられている。
真っ直ぐのびた長い髪と片目が隠れている髪型も相まって本物のように見えなくもないのだが、着ている服はコンビニ店員の服だ。顔と首から下のギャップがすごい。
ハロウィンだから、そういう季節感を大切にするために支給されたのだろうか。
「あ、かぼちゃまん一つお願いします」
「ハイ。…かぼちゃ好きなんですか」
「え、そう、ですね、好きです…」
私があんまりにもかぼちゃ商品を買っているからだろう、若い店員さんが無意識にフ、と笑いすぐ誤魔化すように顔を背けた。たまにこうやってレジをしてもらうけれど、今の表情はなかなかレアだと思う。
いつもすまし顔で大人っぽい印象が強かったが、さきほどの笑顔は年相応、素に近い笑い方なのではないか。そうだったら少し嬉しい。
それにしても、どこで手に入れたんだろうその帽子。安っぽい素材で作られたものではなく、 しっかりした生地に見える。
私の目線が帽子のほうへいっていたのに気づいたらしく店員さんが諦めたような、呆れたような声色で、「出勤したら今日一日被れっていわれたんで被ってるだけです」と言った。自発的に被るようには見えないので納得だった。
「ハロウィンですもんね」
「あと数時間で終わるんで、それまでの辛抱ですけど。…あ」
店員さんは店内を見渡し、私しかいないことを確認したあと「少し待っててもらっていいですか」と言う。
特に急ぐこともないので、疑問符を浮かべつつ頷けば、店員さんは裏へと引っ込んでいき、すぐに戻ってくる。
「これ貰ったんですけど、俺甘いの得意じゃないんでよかったらいりませんか」
店員さんが持ってきたのは、最近発売されたパンプキンラテだった。気になっていたものの、職場近くのコンビニでは見かけなかったものだった。
「いいんですか?」
「むしろ貰ってくれるとありがたいです」
「じゃあ、お言葉に甘えて…あ、じゃあこれあげます!」
店員さんから手渡されたコンビニの袋からビターチョコレートを取り出す。これならば甘いものでもないから、貰ってもきっと困らないだろう。
店員さんは切れ長の目を少しだけ開いて、目をパチパチとさせたあと、俯いて口元に手の甲をあてて笑いを隠した。
「俺がこれもらっちまったら、お客さんかぼちゃだらけになりますね」
「あ、確かに…」
「気づいてなかったんですか」
店員さんの顔は帽子と手でよく見えなかったけれど、くぐもった笑い声は止まっていなかった。あまり笑わない人だと思っていただけに、すごく新鮮な気分だ。
「でも、ハロウィンなんで!それにかぼちゃ好きだから大丈夫です!」
そういって胸をはる。全くもって自慢できることではない。
店員さんはまたフ、と笑って私が差し出したビターチョコレートを受け取った。
「ハロウィンですからね、有り難く貰っときます」
「はい!どうぞどうぞ!」
かぼちゃだらけになったコンビニのレジ袋を手に家へと帰る。コンビニをでる直前に若い店員さんのほうへ目をむけるとまだ少し笑っているように見えた。
今日はすごくレアなあの店員さんの顔を見ることが出来たからいい一日だった、終わりよければすべてよしだ。今日がハロウィンで良かった、と思う日はたぶん今日ぐらいだろう。
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