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身を粉にして働いて、家に帰れば泥のように眠る毎日だ。ご飯を作る気力もなく大抵スーパーの値引きシールが貼られた惣菜やお弁当、スーパーが閉まっていたらコンビニで買う。美味しいのか美味しくないのかわからないままただ食べるという行為をする。買って食べればまだよくて、買わなかったり買っても食べずに寝てしまう日だってあった。
理不尽なクレームを受け、一人じゃ到底終わりそうにない仕事を押し付けられた帰り、いつものように家の近くのコンビニへと入る。まだお腹がすいたと感じているうちはいい方だ。誘蛾灯に集まる虫のように、足がコンビニへと向いていた。
入店して流れる音楽と店員の声。何か違和感を感じてレジへ目を向けるといつも立っているおじさん店員ではなく、若いお兄さんがたっていた。
新しい人か、人がいなくなって夜勤に回されたかどちらか。長い髪の毛を下の方でまとめてお団子にしている。顔は強面だけど顎のラインが羨ましいほどシャープだった。
私と若い店員さんしかいない店内はコンビニラジオが延々と流れている以外、静かだった。一直線にお弁当売り場へいって、籠のなかに売れ残ったお弁当とサラダ、ゼリーをいれていく。食べれなかったものは明日の朝に回せばいい。正直朝御飯を作る時間も寝ていたい。
店員さんの前に食べ物しか入ってない籠を置く。ちらっと確認した名札に研修中の文字はついていなかった。
平坦な低い声とバーコードを読み取る音が坦々と耳を通りすぎていく。ポイントカードと1000円をレジに置く。店員さんがレジの後ろからくじの入った箱を取り出した。
700円以上買うと1回引けるらしい。さっと手を入れて一番上のものをひいて店員さんに渡した。
「あ、おめでとうございます」
抑揚のない声でそう言われてくじをみると、エナジードリンクが当たっていた。こういうのっていつも当たらないからなんだか新鮮だ。店員さんがレジから抜けて、商品をとってくる。店員さんの手にはエナジードリンクとチョコレート。それを店員さんが手慣れた動作でレジに通してサラダやお弁当が入ったレジ袋へいれようとする。
「あ、あの当たったのはエナジードリンクだけじゃ…」
言い終わる前に店員さんの口に長い人差し指が添えられ、反射的に口をつぐんだ。
「俺いつも夕勤で、交代のときにオネーサンとすれ違ってんですけど会うたびしんどそうに歩いてるんで、差し入れってことで。チョコ苦手ですか」
「え、いや!大好きです!」
「なら良かったです。お疲れ様です」
ちょっと口角が上がった店員さんからレジ袋を受けとる。ありがとうございます、という声は震えていた気がする。思わず泣きそうになってぐっと奥歯を噛みしめた。私が出ていくときには入ってきたときと同じ平坦な声に戻っていた。
そこから、家までの帰り道は疲れていたはずなのに、なんだかいつもより足取りが軽かった。
理不尽なクレームを受け、一人じゃ到底終わりそうにない仕事を押し付けられた帰り、いつものように家の近くのコンビニへと入る。まだお腹がすいたと感じているうちはいい方だ。誘蛾灯に集まる虫のように、足がコンビニへと向いていた。
入店して流れる音楽と店員の声。何か違和感を感じてレジへ目を向けるといつも立っているおじさん店員ではなく、若いお兄さんがたっていた。
新しい人か、人がいなくなって夜勤に回されたかどちらか。長い髪の毛を下の方でまとめてお団子にしている。顔は強面だけど顎のラインが羨ましいほどシャープだった。
私と若い店員さんしかいない店内はコンビニラジオが延々と流れている以外、静かだった。一直線にお弁当売り場へいって、籠のなかに売れ残ったお弁当とサラダ、ゼリーをいれていく。食べれなかったものは明日の朝に回せばいい。正直朝御飯を作る時間も寝ていたい。
店員さんの前に食べ物しか入ってない籠を置く。ちらっと確認した名札に研修中の文字はついていなかった。
平坦な低い声とバーコードを読み取る音が坦々と耳を通りすぎていく。ポイントカードと1000円をレジに置く。店員さんがレジの後ろからくじの入った箱を取り出した。
700円以上買うと1回引けるらしい。さっと手を入れて一番上のものをひいて店員さんに渡した。
「あ、おめでとうございます」
抑揚のない声でそう言われてくじをみると、エナジードリンクが当たっていた。こういうのっていつも当たらないからなんだか新鮮だ。店員さんがレジから抜けて、商品をとってくる。店員さんの手にはエナジードリンクとチョコレート。それを店員さんが手慣れた動作でレジに通してサラダやお弁当が入ったレジ袋へいれようとする。
「あ、あの当たったのはエナジードリンクだけじゃ…」
言い終わる前に店員さんの口に長い人差し指が添えられ、反射的に口をつぐんだ。
「俺いつも夕勤で、交代のときにオネーサンとすれ違ってんですけど会うたびしんどそうに歩いてるんで、差し入れってことで。チョコ苦手ですか」
「え、いや!大好きです!」
「なら良かったです。お疲れ様です」
ちょっと口角が上がった店員さんからレジ袋を受けとる。ありがとうございます、という声は震えていた気がする。思わず泣きそうになってぐっと奥歯を噛みしめた。私が出ていくときには入ってきたときと同じ平坦な声に戻っていた。
そこから、家までの帰り道は疲れていたはずなのに、なんだかいつもより足取りが軽かった。
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