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「あのー……さぁ、晋助?ちょっといい?」
円卓を囲んで鬼兵隊幹部中心に話し込みはじめて数時間。幹部どころか鬼兵隊でないわたしは少し離れたところで邪魔にならないよう縮こまっていたけれど、一向に会議で終わる気配がないから恐る恐る声をかけた。
「どうした」
晋助はどんなに忙しい時でもちゃんと振り向いてわたしの話を聞いてくれる。
「そろそろ休憩しない?一回一息ついたほうが頭リセットされていいと思う」
晋助はもう一度振り返り、鬼兵隊士の顔を見る。みんな考え込み過ぎて眉間に皺を寄せていた。大きく息を吐いた晋助は「てめーの言う通りだな」と呟いて、十五分後に会議を再開すると鬼兵隊に伝えた。
伸びをしたり御手洗に駆け込んだり、みんな各々の方法で休憩を取り始める。
「で、何の用だ」
晋助がわたしの隣にドサッと腰をかけて言う。左肩から腕にかけて晋助の温もりが伝わって、全身がカッと熱くなった。
「え?」
「俺に用があるからここにいたんじゃァねーのか」
「あ、うん。そうなんだけど」
「待たせて悪かったな」
わたしは言い淀んで、座っていて乱れた着物の裾を直したりする。なんというか、こうも特別扱いされるとすごく居心地が悪い。特に鬼兵隊のみんなの前だと。命を懸けて共にしたいと思っている総督を、なんの思想もない女が借りてごめん、っていつも思ってる。本当に会議に口挟んだりしてごめん。
わたしを覗き込む晋助から早く言え、という圧を感じる。迷ったけれど、ギュッと目を閉じてから、思い切って口を開いた。
「あの、明後日とか明明後日とか、予定空いてる?」
「は?」
そっと目を開けると晋助は眉をひそめていた。その顔を見た瞬間に今さっきの自分を恨んだ。ああやっぱそうだよね、言わなきゃよかった。後悔するってわかってたのに。
「
「うんそうだよね、わかってる。ごめんさっきの忘れて」
恥ずかしくて立ち上がった。今すぐ居なくなりたい。
立ち上がったわたしの手を晋助が掴んだ。振り払おうとしても、晋助の力は強い。
「何かあるならちゃんと言え」
「晋助、アレでござるよ。ほら、クリスマス」
俯いて黙りこくるわたしの代わりに、万斉が口を挟んだ。
「……クリスマス」
晋助が片方しか開いていない目をぱちくりさせてわたしを見上げる。
今日は十二月二十二日。明後日はクリスマスイブで、明明後日はクリスマスだ。世間的には家族とか恋人とか、とにかく大切な人と過ごす一大イベント。
で、それが高杉晋助にとって一体なんだと言うのだろう。
「ごめん、ちょっと我儘言ってみたくなっただけ」
今日鬼兵隊がこんなに話し合いしてるってことは、近々何か大きなことを計画してるってことだ。わたしに構ってる暇なんてない。今こうして近くにいることを許されているだけで十分贅沢なんだって、わかってる。
「ほら、もう十五分経つよ」
鬼兵隊総督に戻る時間だ。
晋助は何も言わずにわたしの手を離した。
「暇だなあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
誰もいない艋にわたしの声だけが響く。その後にきた静寂が、より一層ひとりだという事実を突きつけてくる。
ここは鬼兵隊の艋のなかに与えられたわたしの部屋。艋は二日前からどこかの星の海に停泊している。今日は二十五日で、鬼兵隊は皆、艋を降りてどこかへ行ってしまった。こういうことは多々あって、出ていくと大体一週間くらいは帰ってこない。留守番には慣れたとは言え、こうも辺境の星だと地球のテレビも見れないしわたしは暇を持て余している。
知らない星の知らない人たちのニュースを観て、ここにはクリスマスって文化はないみたい、なんてことをとりとめもなく考えている。おかしいな、わたしだって普通にイルミネーションとか見てちょっとだけ背伸びしたディナー食べてプレゼント交換して、っていう普通のクリスマスデートをしているはずだったのに。なんでこんなところで
今回は鬼兵隊が襲撃しているのが地球・江戸じゃないということはわかっているからいつもよりは安心なんだけれど、好きな人がテロ起こしてて安心っていうのもどうなの?うっかり鬼兵隊総督なんてものを好きになってしまってから、わたしも度々心を鬼にしている。人の命は平等じゃない。晋助の行く道を塞ぐ人は申し訳ないけど散ってもらうしかない、と思うようになっていた。誰かを犠牲にしないと、わたしは晋助と一緒にいられない。それでも江戸を狙うのは、知り合いが巻き込まれそうで嫌だ。
なーんて、ずっと自分勝手で我儘。
晋助以外の全部を諦めてでも、晋助と一緒にいたい。と思っているはずなのに、こうしてひとり文句を言っている。
物音がして、ふと頭を上げる。
目に入った時計は二十三時になろうとしているところ。いつの間にかうたた寝をしていたみたいだ。クリスマスもう終わっちゃうじゃん。
ていうか、物音?わたし以外誰もいないはずなのに?まさかサンタさんでもあるまいし、と思いながらコソコソと様子を見に部屋を出た。
甲板に出ると、地球とは少し色味が違う星空を背中に、男がひとり立っていた。
「……晋助?」
「サンタクロースだとでも?俺みてぇな男に引っかかる悪い子の所にゃ来ねーよ」
笑いながら晋助が近付いてくる。近付いているのにずっと暗い、と思っていたら影ではなかった。
「サンタと見間違えるくらい、俺も赤いか」
「怪我したの?それとも全部返り血?」
「さぁな。早く帰って来ようとして、ちょっとばかり無茶したが」
晋助は頭も腕も脚も、全身から誰かの血が赤黒く垂れていた。そのおどろおどろしさとは相反して、視線も声もすごく優しい。
「プレゼントも何もしてやれねーが、一緒にいたいってことだけは叶えてやらあ」
我儘言ってごめん、と言う前にわたしの口を、晋助の口が塞いだ。
