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「あ」
気怠げに見えてその実ものすごい早さで仕事を捌いていた晋助が、突然間抜けな声を出して動きを止めた。
どうしたの、と声をかけるととても罰の悪そうな顔をして「なんでもねェ、忘れろ」と言う。
余計気になってしまって、わたしも作業を止めて考えてみるがヒントが少なすぎて何も思い当たらない。
頭を捻っているわたしを置いて作業に戻っていた晋助は早々に仕事を終わらせたようだ。
「いいから、さっさと手ェ動かせ」
わたしの頭を軽く叩き出て行ってしまった。
晋助よりずっと少ない量の作業を何とか終わらせ、書類を抱えて立ち上がる。晋助がいる執務室を探しながら、まださっきのことを考えていた。
「晋助、お仕事終わったよ」
「遅せぇ」
「鬼兵隊員じゃないわたしに手伝わせるほうが悪い」
悪態をつきながら書類を確認する晋助を待つ。この時間手持ち無沙汰なんだよな、と部屋を見渡して暇を潰そうとする。整頓されたなかでふと目についたのは日めくりカレンダー。几帳面なことにきちんと今日の日付になっている。その数字に見覚えがあった。
「…誕生日?」
またしても晋助の動きが止まる。
「銀ちゃんの誕生日だよね?」
晋助は動かない。
「さっき銀ちゃんのお誕生日を思い出したんだよね?」
こちらを向いた晋助は苦虫を噛み潰したような、いたたまれないような、とにかくなんとも言えない見たことの無い顔をしていた。
「気付いちまったか…」
「なんで?隠すことでもないじゃん」
「ふとした瞬間に誕生日を思い出しちまうなんてあいつとの腐れ縁が切りたくても切れないみてーで嫌だ」
嫌だ、ってそんな子供みたいなこと言われても。そんな複雑な関係になったことないからその気持ちが全然わからない。本人たちは不本意だろうが晋助と銀ちゃんの繋がりの強さに少し嫉妬してしまう。
「全く鳥肌が立つぜ」
心底嫌そうな顔で頭を搔く晋助。
「今のちょっと銀ちゃんに似てた」
「ふざけんな」
お祝いしてあげないのかと問うと誰がするかよと即答された。
「でも晋助がお祝いしたら銀ちゃんきっと嫌がるよ?」
「…そいつは悪くねーな」
目の前にあった紙に『誕生日おめでぶっ壊す』と書き殴りわたしに押し付ける。
「自分で行きなよ、これ銀ちゃんに渡して殴られるのわたしじゃん」
これ以上は知らんとばかりに晋助は立ち去る。
諦めてかぶき町へ向かう支度をしよう。
今はこれが精一杯でも、いつかまたふたりが並んで祝い合えたら…いやそんな日はこれまでにも無かったか。いつかまたふたりが直接殴り合う誕生日が来たらいいな、と淡い期待を抱いて歩き出した。
誕生日は嫌でも誰でも毎年来る。
だから今はまだこれでいい。
わたしたちはこれからも何度だって10月10日も8月10日も迎えることができる。
10月のとある日
気怠げに見えてその実ものすごい早さで仕事を捌いていた晋助が、突然間抜けな声を出して動きを止めた。
どうしたの、と声をかけるととても罰の悪そうな顔をして「なんでもねェ、忘れろ」と言う。
余計気になってしまって、わたしも作業を止めて考えてみるがヒントが少なすぎて何も思い当たらない。
頭を捻っているわたしを置いて作業に戻っていた晋助は早々に仕事を終わらせたようだ。
「いいから、さっさと手ェ動かせ」
わたしの頭を軽く叩き出て行ってしまった。
晋助よりずっと少ない量の作業を何とか終わらせ、書類を抱えて立ち上がる。晋助がいる執務室を探しながら、まださっきのことを考えていた。
「晋助、お仕事終わったよ」
「遅せぇ」
「鬼兵隊員じゃないわたしに手伝わせるほうが悪い」
悪態をつきながら書類を確認する晋助を待つ。この時間手持ち無沙汰なんだよな、と部屋を見渡して暇を潰そうとする。整頓されたなかでふと目についたのは日めくりカレンダー。几帳面なことにきちんと今日の日付になっている。その数字に見覚えがあった。
「…誕生日?」
またしても晋助の動きが止まる。
「銀ちゃんの誕生日だよね?」
晋助は動かない。
「さっき銀ちゃんのお誕生日を思い出したんだよね?」
こちらを向いた晋助は苦虫を噛み潰したような、いたたまれないような、とにかくなんとも言えない見たことの無い顔をしていた。
「気付いちまったか…」
「なんで?隠すことでもないじゃん」
「ふとした瞬間に誕生日を思い出しちまうなんてあいつとの腐れ縁が切りたくても切れないみてーで嫌だ」
嫌だ、ってそんな子供みたいなこと言われても。そんな複雑な関係になったことないからその気持ちが全然わからない。本人たちは不本意だろうが晋助と銀ちゃんの繋がりの強さに少し嫉妬してしまう。
「全く鳥肌が立つぜ」
心底嫌そうな顔で頭を搔く晋助。
「今のちょっと銀ちゃんに似てた」
「ふざけんな」
お祝いしてあげないのかと問うと誰がするかよと即答された。
「でも晋助がお祝いしたら銀ちゃんきっと嫌がるよ?」
「…そいつは悪くねーな」
目の前にあった紙に『誕生日おめでぶっ壊す』と書き殴りわたしに押し付ける。
「自分で行きなよ、これ銀ちゃんに渡して殴られるのわたしじゃん」
これ以上は知らんとばかりに晋助は立ち去る。
諦めてかぶき町へ向かう支度をしよう。
今はこれが精一杯でも、いつかまたふたりが並んで祝い合えたら…いやそんな日はこれまでにも無かったか。いつかまたふたりが直接殴り合う誕生日が来たらいいな、と淡い期待を抱いて歩き出した。
誕生日は嫌でも誰でも毎年来る。
だから今はまだこれでいい。
わたしたちはこれからも何度だって10月10日も8月10日も迎えることができる。
10月のとある日