虚構のアイランド・2

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  • その2008

    20251206(土)12:48
    長く伸ばした私の髪の毛も、樹の柔らかい質の髪も、風の流れていく方に揺れていた。
    風が止み、毛先の角度を真下へと戻った時。
    とうとう樹が、言葉を紡いだ。

    「俺達は、無力でした」

    アイランド40

  • その2007

    20251206(土)12:43
    座る私と樹の口は、重かった。
    いや、輝の墓の前で囲む全員の口が、硬かった。
    故人を偲ぶ時に、上手に言葉を話せなくて。
    頬をそっと優しく撫でる感じの風が吹いていた。
    黙っている時の音は、それだけが聞こえてきた。

    アイランド40

  • その2006

    20251205(金)19:40
    樹が輝の墓の前に、仏花をそっと置いた。
    私も一隊員から受け取っていた仏花を、隣に並べた。
    樹と私は、墓の前でくっついてしゃがんでいた。
    肌と肌が触れ合う、スレスレの間隔で。

    アイランド40

  • その2005

    20251205(金)19:37
    輝を撃っていなくても、彼らにはご迷惑をかけていた。
    だから丁寧に、お辞儀をした。
    ネロは戸惑いを隠せなかったが、いざこざを起こす真似はしなかった。
    樹達は揃って、私より軽く頭を下げた。

    アイランド40

  • その2004

    20251205(金)19:34
    それでもここは、ぐっと堪えてほしい。
    ネロより2つ歳上の私が代わりに、コンサート以外では初対面の青年達に、挨拶をした。
    謝罪を込めて、深々と頭を下げた。

    謹慎処分へと罪は軽くなったとしても、問題を発展させたのはこの私だ。

    アイランド40

  • その2003

    20251205(金)19:10
    輝の眠る地で、いざこざを起こしたくない。
    ネロが樹達に突っかかる所を、私は右手で制した。

    彼__輝の実の弟だった__の気持ちもわかる。
    共に活動していた仲間が止めてくれば良かったのに、と思ったのだろう。

    アイランド40

  • その2002

    20251205(金)16:32
    樹と潮の違いは、髪の長さだった。
    潮は耳たぶを見せているので短髪だが、樹は頬のすぐ下まで伸びていた。
    首周りに毛先が、かかりそうであった。

    4人の端正な顔立ちの青年達を見たネロ。
    彼は歯を見せつける程に、怒りを示そうとした。

    アイランド40

  • その2001

    20251205(金)16:28
    透明の包み紙の対角線を背に巻かれた仏花。
    おそらく、花屋で購入したのだと察した。

    明るい茶髪なのは、樹の左隣に立つ翔のみ。
    樹の右隣の還は黒髪で、樹と手前にいる潮は濃い茶髪だった。

    アイランド40

  • その2000

    20251205(金)12:47
    男性アイドルグループ[5秒前]。
    かつて輝が所属していた。
    そのメンバーである二島樹、三田翔、四天還、五谷潮が墓参りに来ていた。
    私から見て奥から2番目に立つ男性・樹の両手に仏花を持っていた。

    アイランド40

  • その1999

    20251205(金)12:42
    彼らの顔を、私はどこかで見た事がある。

    否、私はとうに彼らの正体を知っている。
    親友・朋美と一緒に、コンサートまで行ったのだ。
    忘れたなんて、とんでもない。

    アイランド40