虚構のアイランド・2

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  • その2018 NEW

    20251207(日)12:19
    小さな涙を、ハンカチで押さえるように拭った。
    ハンカチを握った手は、曲げられた膝の上に置いた。

    「笑わせてくれます、あなた方ならば。私にくれたように、皆を笑顔にさせられます。
    いいえ、あなた方はこれからも皆を喜ばせるべきです」

    アイランド40

  • その2017 NEW

    20251207(日)12:15
    翔を自分の胸元で泣かせている潮が、私に言った。

    「俺達は、これから……どうすればいいのですか? 今までのように、皆を喜ばせられるのですか?」
    潮が言い終わったタイミングで、私は胸元のポケットから白いハンカチを取り出した。

    アイランド40

  • その2016 NEW

    20251207(日)08:47
    泣いているのは、翔だけではない。
    私も、静かに涙を、溢していた。

    落ちるだけの涙の粒は、平らに磨かれた墓石の台に付着した。
    涙は石に染み込まず、ぷっくりと膨らみがあった。

    アイランド40

  • その2015 NEW

    20251207(日)08:44
    樹達は、黙って聞いてくれた。
    「輝さんが撃たれて呼吸困難になった時、私は必死に呼びかけました。
    『あなたは生きなくてはならない』と。
    言葉は虚しく……彼は眠りにつきました」
    私はつらつらと話していただけだった。
    目元が熱く感じる。
    視界も下側で、水滴のついたガラスのように濁っていた。

    アイランド40

  • その2014 NEW

    20251207(日)08:39
    「それって……」
    「輝さんが在籍していた、最後のコンサートの時です。まだ、交流会がありました。
    パーテーション越しでお話しするだけでしだが、私にとってはかけがえのない思い出となりました。
    脱退のニュースは、私も衝撃を受けて、泣きました。
    最初に誘ってくれた親友が、慰めてくれました」

    アイランド40

  • その2013

    20251206(土)19:23
    訴えかけるように言った翔は、この場で泣き出した。
    俯いて泣く翔の頭を、潮が優しく撫でていた。

    「私は輝さんから、あなた方から元気と、勇気を貰いました。
    輝さんと共通の音楽グループを知っていただけで、はしゃいで迷惑をかけてしまいました」

    アイランド40

  • その2012

    20251206(土)19:12
    「あんたの方がすげぇっすよ!」
    「翔!」
    「軍人だけどよ、輝を連れて行こうとしたんすよね? 元[南]のボーデンっておっさんが言ってましたよ!」
    翔は敬語に不慣れな感じで、生意気っぽさが残っていた。
    ボーデンさんか……なら彼らが知っていてもおかしくない。

    アイランド40

  • その2011

    20251206(土)19:02
    後悔の念ばかりを呟く樹達。
    でも、彼らは輝と共に、歌とダンスでファン達を魅了させてくれた。
    彼らには……罪はない。
    「あなた方は悪くありません。むしろ感謝しています。輝さんを気にかけてくれて……。
    私の失態が、いけなかったのです」

    アイランド40

  • その2010

    20251206(土)16:44
    「何もできませんでした。残った4人で頑張ろうとしても……輝に対する後悔が残って、笑う回数が減りました」
    樹の隣にいた還が、後に続いた。
    還は、口を閉じなかった。
    「俺達はアイドルグループのメンバー、扇浜総指揮官は軍のトップ層にいる男。歳も力も敵いません。
    去っていく輝を、見届けるしかありませんでした」

    アイランド40

  • その2009

    20251206(土)16:39
    樹はさらに目線を落とした。
    2束の仏花の底部分を、見つめているようだった。

    「脱退を止めたらよかったのに、できませんでした。扇浜総指揮官に呼ばれたからって、断らずに」

    アイランド40