虚構のアイランド【まとめ】
本編10・テンス『オーバー』(2)
2024/07/27 08:09アイランド本編
♫♫♫
「う、うわあああぁ!?」
潜水艦の操縦席にて、ネロは突如大声を出した。
どのフロアを巡っても、この艦には彼以外に誰もいない。
彼は狼狽して、慌ててレバーを握っていた。
何かに追われているのか、蒼白な表情になっていた。
「うわあああ!」
ネロの悲鳴は泣き止まない。
小型の潜水艦は180度回転し、[ノース・エリア]の陸地付近の海底から離れて行った。
潜水艦の全高分だけ浮上して、[スロープ・アイランド]の西側の海中を潜航した。
加速をつけている為、潜水艦の背部のブースターから大量の気泡がブクブクと溢れ出る。
気泡の噴射だけでも、後をつけられる危険性はある。
だが、今のネロにそこまで気を配る余裕はない。
彼にはただ1つ、扇浜から、[ノータブル]から逃げ切るのみしか頭になかった。
「やだあ!やだあああ!」
『嫌だ』と叫ぼうとしたネロ。
恐怖心に駆られて、うまく発せなくなっていた。
とにかく、遠くへ逃げたい。
[スロープ・アイランド]と他の[アイランド]の境界線を越えたい。
ネロは両手で潜水艦の動力用のレバーを握りしめたまま。
前進するのに、常に前に倒している。
方向なんて構っていられなかった。
レーダー反応があっても、敵と認識して逃げる選択肢を取った。
遠くへ距離を取らないと…攻撃されて…。
酷い焦燥感に駆られていたネロ。
滅多に涙を流さない強気な18の少年だったのに、今は泣き虫小僧となっていた。
声も、喉が枯れそうになるくらいに荒げていた。
逃亡中、突然、相手側からの通信が一方的に入った。
ピピっと電子音が鳴った後、音声が流れてきた。
中年の男性の、淡々とした声だった。
『そこの艦に搭乗しているのはネロか?』
冷静さを促すような、落ち着き払った声。
だが慌てふためくネロは、聞いていない。
聞こえてはいるかもしれないが…人の言葉に耳を傾ける余裕はなかった。
何もかも、彼に近づく輩が敵だと勝手に決めつけていた。
『応答して下さい!ネロでしょう!?』
『おいコラ!止まれよガキ!』
1人からはネロを罵るような別称で叫ばれた。
罵倒してくれるなら、気にかける必要はない。
武装で思いっきり、蹴散らせるだろう。
潜水艦の操縦席のモニターはもう、[ノータブル]の全フロアは表示されていない。
周りの海底の、魚介類や海藻の生態を観察できる映像へと切り替わっている。
潜水艦の正面に、回り込んだロボが2体。
モニターにも左右にロボが映っていた。
やはり武器を持っている…!
ネロは左のレバーを離し、近くにある黄色いボタンを押した。
潜水艦正面下から、白い弾が2発、噴出された。
『海中ミサイルかよ!』
『避けるぞ!無闇に攻撃するな!』
海中ミサイルは左右に1発ずつ前へ飛んで行った。
ちょうどロボが標的にされたのだが、2体は軽快な動きで回避した。
ミサイルは真っ直ぐ、岩礁の群れへと衝突した。
爆発には、白い煙が噴き出されるだけだった。
魚や貝などの生命体が逃げ遅れてなければいいのだが…とロボを操縦するパイロットは願っていた。
『止まれ!ネロ!これ以上被害を悪化させる気か!』
「…被害…?う、うわあああああ!?」
ネロはロボのパイロットの発言に一旦、ピタリと止まった。
だが…それは彼を混乱させるだけだった。
ネロはレバーを強く握りしめた。
潜水艦は水中にも関わらず、激しい動作を繰り返した。
ミサイルが叶わないなら、加速をつけた体当たりで突き抜けようとする。
ロボへの照準を、完全に捉えきれずに。
『クソッ!足止めでもしねぇと不可能じゃねえか!』
『このロボの武装では…潜水艦が破裂するおそれがあるからな…!』
ミサイルを回避した2体のロボは、潜水艦の両脇を並走した状態である。
潜水艦の背後にも、ロボが1体、追いかけていた。
ブースターから噴射される多量の泡が、視界を妨げようとする。
しかし、ロボのコックピット内には地図の座標データがあり、それを参考に尾行していた。
背後に追ってくるロボのパイロットこそが、ロボ達のリーダー格であった。
『ネロ!ボーデンだ!合言葉は《トクニン》だ!これでわかるか!』
鼓膜が破れそうなくらい、大きな声で説得した。
暴走する潜水艦が、動きを止めた。
操縦席の中で、ネロはハッと目を醒める感覚を味わった。
両手で握るレバーへの負担が、やわらいだ。
ネロはゆっくり後ろを向いて、言った。
「《トクニン》って、まさか…。」
『お前にはこの機体がわからねぇのか!?』
ネロに対する叱責も聞こえてきた。
正面モニターに、彼は目を向ける。
「水陸両用の、【イズミル】…?」
『[サウザンズ]はあなたの味方です、ネロ。』
リーダー格のボーデン以外の人物も、ネロは特定できた。
「ラウトと、アージン…?」
『今は我々パイロット部隊しか、お前を取り囲む者はいない。大丈夫だ。』
最後にボーデンが発言した。
「は、はは…。よかった…。」
ネロはホッとして、身体の力が抜けた。
膝をついた後、右側にゆっくりと倒れた。
【ペンタグラム】パイロット部隊の最年少は瞼を閉じて、眠りについた。
『ネロ!ネロ!』
『おい!返事をしろ!ネロ!』
アージンとラウトが、しつこく呼びかけた。
反応は、なかった。
ボーデン機の【イズミル】が、他の2体の間に入った。
『この艦に損傷はない。彼は無事だ。
俺は司令室に報告する。引き上げ隊が来るまではここで待機だ。』
『『了解!』』
リーダー格の指示に、部隊の人間は快く返事した。
【イズミル】のコックピット内で、ボーデンは簡単な操作をする。
[サウザンズ]の司令室に、通信が繋がった。
『こちらボーデン、ネロ・アマリーノの潜水艦を捕獲した。直ちに引き上げを要請する。』
『了解した。早速そちらに飛ばそう。座標を指定してくれ。』
「う、うわあああぁ!?」
潜水艦の操縦席にて、ネロは突如大声を出した。
どのフロアを巡っても、この艦には彼以外に誰もいない。
彼は狼狽して、慌ててレバーを握っていた。
何かに追われているのか、蒼白な表情になっていた。
「うわあああ!」
ネロの悲鳴は泣き止まない。
小型の潜水艦は180度回転し、[ノース・エリア]の陸地付近の海底から離れて行った。
潜水艦の全高分だけ浮上して、[スロープ・アイランド]の西側の海中を潜航した。
加速をつけている為、潜水艦の背部のブースターから大量の気泡がブクブクと溢れ出る。
気泡の噴射だけでも、後をつけられる危険性はある。
だが、今のネロにそこまで気を配る余裕はない。
彼にはただ1つ、扇浜から、[ノータブル]から逃げ切るのみしか頭になかった。
「やだあ!やだあああ!」
『嫌だ』と叫ぼうとしたネロ。
恐怖心に駆られて、うまく発せなくなっていた。
とにかく、遠くへ逃げたい。
[スロープ・アイランド]と他の[アイランド]の境界線を越えたい。
ネロは両手で潜水艦の動力用のレバーを握りしめたまま。
前進するのに、常に前に倒している。
方向なんて構っていられなかった。
レーダー反応があっても、敵と認識して逃げる選択肢を取った。
遠くへ距離を取らないと…攻撃されて…。
酷い焦燥感に駆られていたネロ。
滅多に涙を流さない強気な18の少年だったのに、今は泣き虫小僧となっていた。
声も、喉が枯れそうになるくらいに荒げていた。
逃亡中、突然、相手側からの通信が一方的に入った。
ピピっと電子音が鳴った後、音声が流れてきた。
中年の男性の、淡々とした声だった。
『そこの艦に搭乗しているのはネロか?』
冷静さを促すような、落ち着き払った声。
だが慌てふためくネロは、聞いていない。
聞こえてはいるかもしれないが…人の言葉に耳を傾ける余裕はなかった。
何もかも、彼に近づく輩が敵だと勝手に決めつけていた。
『応答して下さい!ネロでしょう!?』
『おいコラ!止まれよガキ!』
1人からはネロを罵るような別称で叫ばれた。
罵倒してくれるなら、気にかける必要はない。
武装で思いっきり、蹴散らせるだろう。
潜水艦の操縦席のモニターはもう、[ノータブル]の全フロアは表示されていない。
周りの海底の、魚介類や海藻の生態を観察できる映像へと切り替わっている。
潜水艦の正面に、回り込んだロボが2体。
モニターにも左右にロボが映っていた。
やはり武器を持っている…!
ネロは左のレバーを離し、近くにある黄色いボタンを押した。
潜水艦正面下から、白い弾が2発、噴出された。
『海中ミサイルかよ!』
『避けるぞ!無闇に攻撃するな!』
海中ミサイルは左右に1発ずつ前へ飛んで行った。
ちょうどロボが標的にされたのだが、2体は軽快な動きで回避した。
ミサイルは真っ直ぐ、岩礁の群れへと衝突した。
爆発には、白い煙が噴き出されるだけだった。
魚や貝などの生命体が逃げ遅れてなければいいのだが…とロボを操縦するパイロットは願っていた。
『止まれ!ネロ!これ以上被害を悪化させる気か!』
「…被害…?う、うわあああああ!?」
ネロはロボのパイロットの発言に一旦、ピタリと止まった。
だが…それは彼を混乱させるだけだった。
ネロはレバーを強く握りしめた。
潜水艦は水中にも関わらず、激しい動作を繰り返した。
ミサイルが叶わないなら、加速をつけた体当たりで突き抜けようとする。
ロボへの照準を、完全に捉えきれずに。
『クソッ!足止めでもしねぇと不可能じゃねえか!』
『このロボの武装では…潜水艦が破裂するおそれがあるからな…!』
ミサイルを回避した2体のロボは、潜水艦の両脇を並走した状態である。
潜水艦の背後にも、ロボが1体、追いかけていた。
ブースターから噴射される多量の泡が、視界を妨げようとする。
しかし、ロボのコックピット内には地図の座標データがあり、それを参考に尾行していた。
背後に追ってくるロボのパイロットこそが、ロボ達のリーダー格であった。
『ネロ!ボーデンだ!合言葉は《トクニン》だ!これでわかるか!』
鼓膜が破れそうなくらい、大きな声で説得した。
暴走する潜水艦が、動きを止めた。
操縦席の中で、ネロはハッと目を醒める感覚を味わった。
両手で握るレバーへの負担が、やわらいだ。
ネロはゆっくり後ろを向いて、言った。
「《トクニン》って、まさか…。」
『お前にはこの機体がわからねぇのか!?』
ネロに対する叱責も聞こえてきた。
正面モニターに、彼は目を向ける。
「水陸両用の、【イズミル】…?」
『[サウザンズ]はあなたの味方です、ネロ。』
リーダー格のボーデン以外の人物も、ネロは特定できた。
「ラウトと、アージン…?」
『今は我々パイロット部隊しか、お前を取り囲む者はいない。大丈夫だ。』
最後にボーデンが発言した。
「は、はは…。よかった…。」
ネロはホッとして、身体の力が抜けた。
膝をついた後、右側にゆっくりと倒れた。
【ペンタグラム】パイロット部隊の最年少は瞼を閉じて、眠りについた。
『ネロ!ネロ!』
『おい!返事をしろ!ネロ!』
アージンとラウトが、しつこく呼びかけた。
反応は、なかった。
ボーデン機の【イズミル】が、他の2体の間に入った。
『この艦に損傷はない。彼は無事だ。
俺は司令室に報告する。引き上げ隊が来るまではここで待機だ。』
『『了解!』』
リーダー格の指示に、部隊の人間は快く返事した。
【イズミル】のコックピット内で、ボーデンは簡単な操作をする。
[サウザンズ]の司令室に、通信が繋がった。
『こちらボーデン、ネロ・アマリーノの潜水艦を捕獲した。直ちに引き上げを要請する。』
『了解した。早速そちらに飛ばそう。座標を指定してくれ。』