9・協議の日

☆☆☆
『叫び声か…?』勇希兄ちゃんが呟いた。
叫び声にしては小さい気がするんだけど…。
「気のせいじゃないの?」
『後ろから聞こえたんだ。会議場だろ?』
「会議の最中で叫んだら周りは引くでしょ?マナー違反とかの指摘もあるし。」
勇希兄ちゃん頓珍漢な事言うなぁ、と私は思った。

勇希兄ちゃんの感じた違和感は、嘘ではなかった。
和希兄ちゃんが原因を調査していたので、はっきりわかった。
『これは…!勇希、未衣子。会議場の建物を見てくれ。3階の窓だ。』
「3階?わかったよ。」
和希兄ちゃんに促されて、私はモニターを切り替えて、会議場の3階の窓を確認した。1か所だけ、窓が開いている場所があった。
中に人が立っていた。叫んだ人の特定はできるだろう。

いや、人?
私はモニターを拡大して、もう一度凝視した。
中世の欧州の…海賊の船長の様な服装しているけど、頭部がおかしい。
トカゲ頭?今日は会議であって、仮装パーティーじゃないし。
トカゲ頭に疑問を浮かべていたら、突然警報が鳴った。
男の人のアナウンスも大声で繰り返していた。
王子の側近の兵達のロボが、同じ方向に槍を構えた。
会議場の位置と真逆の、広大な更地。
そこに、ドォン!と地割れしそうなくらいにデカい音がした。地面も数秒間揺れた。
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