9・協議の日

俺は決めた。
「燈太、戻ってきたら、話せる範囲で課外活動の思い出を話したい。
不安にさせたお詫びがしたい。
だからお前も、夏の大会の思い出を話してほしい。」
嫌か?と俺は言葉を付け加えていた。
『むしろ聞かせてほしい。今ちょっとだけでも…。』
「今は帰れない。遠くにいてるから。」
『そっか…帰れないから今話せないんだね。』「そういう事。」
燈太はどうやら腑に落ちないらしい。
電話越しの声からでも、トーンが低いのはわかるから。

こればかりは、我慢してもらうしかない。
延長は後から決まったけども、今俺が伝えてる『課外活動』を終わらせないといけないんだ。
普通に暮らす燈太達に、HRの魔の手が伸びないように。
俺達が立ち向かわなきゃ。

「俺は必ず帰る。思い出話もたくさんする。待っていてほしい。
寂しいのは俺も同じだ。
今度は絶対終わらせるから。」
『…わかった。元気でね。』「ああ。」
言葉が続かず、電話は終了した。受話器を充電器に差し込んだ。
その後に俺はため息をついた。

「もう戻れないのはわかりきってるけど、友達に隠し事している俺がつらい。
あんなに気にかけてくれる親友は、そうそういないのにな…。」
呟いた後、俺はすぐに通信室を出た。
自分を責めても仕方ない、と切り捨てて。
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