8・業火の日

実は私達が期間継続の申請書を出した時に提出した作戦案は、実現が困難だった理由で却下された。
ところが、アレックスさんが部分的にはギリギリいけるだろうと検討してくれて、北極と南極の極寒地を指定した。
指定地に仮想空間を本物の様に見せるホログラム装置を事前に設置してもらった。その実現が、今こそ叶う時が来たんだ。
「私達は心理的ダメージをくらったけど、敵は何もくらっていないんだ。
せめて同じ様な痛い目に合わせてみたいんだ。
恐怖心を煽る効果って、強いんだから。」
『俺も同じかも。アイツ許せねぇよ。妹を傷物にしやがってよ…。』
「あの時よりは、大丈夫。」
『馬鹿野郎!俺や兄貴は凄く心配したんだぞ!お前の身体を!』
「勇希兄ちゃんが私の代わりに涙を流してくれているのは知っている。
私の涙はいじめの時に枯れ果ててしまったんだ。
読書で感動体験を試みても、無駄だったし。」
『…きっと、泣ける時くるって。』
勇希兄ちゃんが涙を流した。私の事になると感情移入して、喜怒哀楽を表に出してくれる勇希兄ちゃん。
ごめんね、私の我儘を庇ってくれて。

『未衣子、アレックスさんには展開の要請を依頼したぞ。』
「あ、ありがとう。」
和希兄ちゃんが準備を進めていた。
そうだ、今はまだ戦闘の序盤なんだ。
マルロを落とすのが先だ。
11/29ページ
スキ