7・告白の日

武人兄ちゃんは顔を背けたままだった。
「でももう限界です。未衣子の身体が回復するまでは彼女の側にいますが…ここは敵に察知されたみたいですね?普通の病院へ移転する予定ですから、もう会う事はないでしょう。」
失礼します、と和希兄ちゃんは頭を下げた。同時に座ってる私に声をかけた。
「未衣子、準備が整ったら言うんだよ?」
和希兄ちゃんはスッと去っていた。

私だけ残る形になった。武人兄ちゃんは顔を向けてくれない。
「未衣子。君も早く行きや。これから面白い事、いっぱいあるんやから。」

面白い事?私は今が、楽しいんだけど…。
酷い目に遭わせたくないからかな。
「手続き済ましとるやろ?俺に関わらん方がええ。君らは普通に生きていけるんやから。」

普通に…。
学校行って勉強して、友達つくって楽しむ事、かな。
兄達はその『普通』で生きているけど…私はできていない。
友達はいないし、勉強もテストの点が取れるだけで褒めてくれない。
兄達の支えがあってなんとか学校に通えてる。
本当だったら不登校で引きこもって読書したり、家事の手伝いしたい。家事をこなせば、暮らしには困らないから。

私は『普通』が苦手だった。
同級生や上級生にいじめを受けてから、自分の身体が汚されてから。
私は、『特別』な経験がしたかった。
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