5・酔狂の日

右手で持った、針の射撃銃。
毒で苦しむニシアに、回避行動を取る意識は薄いだろう。
彼はうまく、【スイム・ドランク】の尾や上半身の繋ぎ目に針を刺した。

【スイム・ドランク】は海底に仰向けで倒れた。
所々に刺された針で動けない。
『毒持ってんの知ってんのに、このザマなん?』
【ブラッドガンナー】は針の射撃銃を、【スイム・ドランク】の胸元に当たる角度に定めた。
するとニシアは喚くのをやめ、逆に笑い出した。
『能力を持て余すのをやめたら?何の力もない原始地球人の味方になって、何したいのかしら、』
ニシアが言い終わる前に、武人は射撃銃の引き金をひいた。
動けなくなった【スイム・ドランク】の心臓部を狙うのは容易かった。
周りの小魚達も、海底へバタバタと落ちていった。

『…アレックス、AIの処理頼むわ。』
『わかった…どうした?』
『大丈夫や。すぐ戻るわ。子供らは?』
『時期を見て本部へ収容した。』
『そうか…。』
【ブラッドガンナー】は十字型で倒れた【スイム・ドランク】を後にした。
ニシアはもう、意識を取り戻さなかった。

(もう少し、もう少し早かったら。お前と添い遂げたかもな…綺麗だった。)
武人は周囲を確認しながら、ゆっくりと[ラストコア]本部へ戻った。

☆つづく☆
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