5・酔狂の日

アレックスさんがコップを持ったまま、私達の前にやってきた。
もう寝ぼけてないみたい。
「図鑑も置いている。もし気になる生き物を見つけたなら探してみるといい。」
勉強になるぞ、と彼は言った。

図鑑まではいいけど…気になる魚を私は見つけていた。
鮮やかな赤色の小さな魚を。
小さな魚は群れをつくり、深海をまばらに彷徨っていた。
燃える炎のように輝く赤い魚達に、私は見惚れていた。
「何ていう魚なんだろう?」
「俺も初めてみるぜ?」
へー、とみんなで興味津々な中、アレックスさんだけ首を傾げていた。
彼の顔が凶変するのも、時間の問題だった…。
「モニターから離れろ!その魚は愛嬌湾内にいない!」
私達はえ?と首を傾げた。
すぐに離れられず、私はもう一度モニターを見た。
1尾の魚がこちらを見ていた。
目と目があったのかな、と思ったのが油断だったかもしれない。
「きゃぁ!?」
私は尻餅をついた。
魚が突進してきたからだ。
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