14・忘却の日(終)

ベッドで眠る未衣子の隣に祝いの品を置いて去った、半日後。
未衣子が目を覚ました。

この12時間で、俺と兄貴は《武人兄ちゃん》の行方を耳にした。
土星圏の人達が必死に火星圏タレス全域を捜索してくれたが…《武人兄ちゃん》の姿はなかったと。
巨大グモや飛行グモの残骸ばかりだと。
とは言え、捜索自体は続くようだった。
西条司令には無理はしないでくださいと労いの言葉をかけていた。
《武人兄ちゃん》が消えたのには、変わりはない。
未衣子に知らせないと。

俺と兄貴は駆け足で未衣子の眠る部屋に向かった。
部屋に入って、強引に起こして現状を伝えたかった。
起こす手間が省けた。未衣子は既に起きていたのだ。
ベッドの淵に座って、足をブラブラさせながら妹は言った。
「おはよう、和希兄ちゃん、勇希兄ちゃん。」

慌ててる様子の俺達と違って、未衣子は落ち着いていた。
ドアが開いているのに気づいた妹は、部屋を出ようとした。
クローゼットにしまっていた普段着に着替えていたから、外に出るのに何も問題はない。

しかし、俺達は未衣子が外に出るのを防いだ。
戦いが終わって呑気に過ごしている場合じゃない。
妹には、重大な話をしないといけない。
「何?どうしたの2人とも。お腹空いたから軽食でも…。」
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