14・忘却の日(終)

未衣子が眠る前と後で、一変した。

眠る前はずっと、《武人兄ちゃん》の帰還を待ち望んでいた。
土星圏の人が捜索に向かうと申し出た時、よろしくお願いしますと頭を下げたくらいだし。
だから、心配すんな、休めって、未衣子を俺と兄貴は寝かしつけたんだ。
それが引き金なのかはわからない。
未衣子が眠ると、俺と兄貴も眠った。

地球降下時は衝撃に備える為に起きたけど、未衣子だけは深い眠りについていた。
本当はコイツも起こす予定だったが、アレックスさんが特別に認めてくれて、そのまま眠らせていた。
降下先はカナダの森だって、兄貴から聞いた。臨時支部の近くで良かった。
洋画のヒッチハイクのシーンみたいに、俺達は車に乗せてもらった。
【パスティーユ】とかのロボ等、機体や機械やら…宇宙船に搭載されていた物は後日回収する予定らしい。
俺達地球人や協力した他星人達のみ、臨時支部に戻った。
臨時支部では歓喜の嵐だった。本来なら感謝でいっぱいなのに。

未衣子が未だに起きない。
背丈が同じくらいの俺では背負いきれず、兄貴がおんぶして運んでいた。兄貴が肩とか腰とか痛まないか、多少心配していた。
未衣子の事で頭がいっぱいになり、祝福ムードを素直に受け入れられなかった。
兄貴にせっかくだからと言われて、形だけ喜ぶようにした。
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