14・忘却の日(終)

☆☆☆
「アレックスさん、先生。これが昨夜、未衣子が見た夢です。」
兄貴がアレックスさんにノートを渡した。
アレックスさんはノートを開いて、未衣子が書いた内容を読んだ。
俺達は深刻そうに見つめていた。

「やはりか…ここまで来ても一向に“アイツ”の名前が出てこないとは…。」
アレックスさんが俺達に内容を見せた。
未衣子の昨夜の夢は、只の日常風景だ。
体育の授業で膝をケガしたけど、俺が心配してくれたから気持ちが吹っ飛んだ、とかだった。
一昨日の夢には兄貴が現れた。
パソコンの設定でトラブルが起きて、その時に兄貴が助けてくれた、だったな。
過去を振り返ると、俺や兄貴、祖父母に父、学校の先生や喫茶店の常連までが、度々未衣子の夢に出演していた。
コイツが普通の女の子だったら、これくらいの夢は普通に見るよな…ってだけで済む。

だが、未衣子は普通の女の子じゃ、なかったんだ。
[ラストコア]に来て最初の健康診断があった。
未衣子はアレックスさんや医者の先生に、自分の異常を伝えていた。

《同じ夢しか見れない》という異常を。
《同じ夢》の中に毎回出演する“アイツ”の正体を知ったのは、[ラストコア]に来てからだ。
黒ずくめの男の生き様ばかりを、俺達は未衣子から聞かされていた。
やめろと止めてもだ。
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