14・忘却の日(終)

木製の学習机に、透明の水滴が1つ、2つ落ちていた。
カフェラテのカップは机の奥に置いていたから、手前に水滴が落ちる事なんてない。
それに、自分の顔の頬に、何か冷たい物が感じられたんだ。

鏡はないので、近くの窓で自分の今の顔を確かめた。

机の上の水滴。頬に冷たい物の感触。
正体は…涙だった。

小学生の時にいじめられて以来、私は涙を流せなくなっていた。
悲しい表情を、作ることはできても。

だから、涙が溢れた時は、驚きで声を発せなかった。

今日の出来事を振り返った。
掃除と洗濯でヘマなんてした記憶はないし、勉強もハードな問題には挑戦していない。
先程の小説の中身だって、涙を誘うような感動シーンの描写は見当たらなかった。

なんでだろう?心当たりなんて、全くない。

でも…訳の分からない虚しさだけは、感じている。
兄達も祖父母も父もいるし、寂しくはないんだけど…。
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