14・忘却の日(終)

★★★
未衣子とは食堂で別れて、静かに朝食を摂った後は、アレックスさんの研究室へ向かった。
道中で王子とサレンさんに出くわした。2人の表情は、曇っていた。
声掛け自体は普通にこなしていた。

会話を続けようとして、兄貴が王子達に尋ねた一言。
「悪夢を、見たんですね?」
俯きがちだった王子達が、顔を上げた。
「何故、そう思う。」
「俺達も昨夜、悪夢を見ましたから。」
理由付けには納得いかない回答だけど、王子達は深く追及しなかった。

「あれは…予言なのか。夢から醒めたというのに、涙が既にこぼれ落ちていたのだ。紛れもしない現実だろうか…?」
王子の弱気な問いかけに、俺達もサレンさんは肯定も否定もしなかった。会話が思うように弾まなくて、ぎこちない空気が流れた。

王子達はこれ以上、[ラストコア]に滞在するのをやめて、宇宙へ戻る決心をした。
詳細は言わなかったけど、多分王子達も同じ武人兄ちゃんの《夢》を見たんだろう。
待ってくれ、と留まらせる必要はなかった。
もう存在しないような奴を待ち続けても、疲労が溜まるだけだ。
王子達が旅立つ日、俺達は統制制御室のモニターから見送った。
彼らの記憶は残っているから、未衣子もその場にいた。

「仲間が見つかるといいね。」未衣子の言葉だった。
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