14・忘却の日(終)

★★★
食堂に未衣子の姿があった。
妹は朝食のセットを食べ終える頃合だった。
最後の1口を食べ切って、トレーごと食器を戻そうと妹が立ち上がった時、彼女は俺達を見つけた。
未衣子は食器を運んだまま、俺達の前に近づいた。

「おはよう。食器を戻したら、ノートを渡すね。」
俺達と違って、未衣子はすっきりしていて、元気だった。
ぐっすりと眠れたようだ。
スタスタと食器を戻し、再び俺達の前にやってきた。
ノートを渡す為にだ。

「はい、これ。昨日見た夢を綴ったよ。」
未衣子は安物のノートを兄貴に渡した。
兄貴も断る事なく、黙って受け取った。
ここで未衣子はん?と不思議そうに俺達を見てきた。
まじまじと、悲壮な表情の俺達を眺めていた。

「どうしたの兄ちゃん達。暗いし、疲れた顔して。
なんか悪い夢でも見たの?」
何で。何でそこは気がついているのに。
どうして、肝心の《記憶》は思い出せないんだよ!
俺は未衣子に手を出しそうなくらいには、怒りが込み上げていた。
隣で冷静さを失ってない兄貴が肩に手を置いてなかったら、俺は妹を叩いていたかもしれない。
「未衣子、今日はどうするんだ?」
「これから勉強するわ。学校の勉強遅れてるから、少しは自分でカバーしていかないと。」
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