14・忘却の日(終)

★★★
眠気は一瞬で吹き飛んだ。ハッ、と声を出して目を開いたから。
数秒で[ラストコア]の、俺にあてがわれた個室だと分かった。
非常灯以外は電気を消していて、室内は暗かった。
あの明るいだけの空間は…夢だったんだな。

「夢か…。だったら兄ちゃんが生きてる可能性も…。」
手の甲にちょっぴり濡れた感覚がした。
左手だけ、顔に近づけて正体を確かめた。
水滴と同じ透明の雫が落ちていた。
俺は寝ていた時の汗か、夢で流した涙かの区別がついていなかった。
起きてすぐに頭が回らない。

そこで、モノに判断してもらった。ちょうど壁にモニターがあった。
モニターは普段は海底の景色を眺める窓代わりか、作業の為のパソコン代わりに使われる。
今は睡眠中だったから、電源を落としている。
真っ暗だがモニターの液晶は鏡代わりにもなる。
俺は今、自分の顔がどんな状態か確認した。

涙がこぼれ落ちた、しんみりとした控えめの泣き顔じゃなかった。
俺の泣き顔は酷かった。
起き上がったから手の甲に落ちただけで、ベッドの中でグズグズ泣いていたのがまるわかりだった。
目下に涙が溢れんばかりに溜まっているし、顔も赤みを帯びていた。

俺はさっきまで見ていた夢に没頭し、儚さと切なさを感じて、泣いていたんだと気付かされた。
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