14・忘却の日(終)

「今までも似た素振りをしていたが、意気消沈のつもりか!
ここまで気遣う者がいるのだぞ!私にそう言ったではないか!」
『俺も戦い過ぎて限界が来てたんや。弱気になるのは無理ないやろ。』
「私との対決はどうなる!先にいかれては、私は同朋達の無念を果たせないだろう!」
『お前の使命は、散らばった同朋を探す事や。俺を倒しても無念は晴らせへん。
それにお前は普通の異星人で、王子や。慕う民の為にも、命を大事にしいや。』
王子は突っかかるのをやめ、足場のない筈の空間で、泣き崩れた。
サレンさんが側に寄って、背中に軽い温もりを与えた。

王子が先に泣き崩れたけど、俺も兄貴も、泣きたい気持ちでいっぱいだった。我慢が出来ずに、思いの丈をぶつけた。
「…天国に行きそうな奴が、簡単に命を大切にしろとか言うなよ…。」
『天国やなくて、地獄やろうなぁ。俺は星の生命も民の人生を壊してんねんから、罪を背負わなあかんし。』

怒りの表情は、すでに武人兄ちゃんに向けていた。
「お前のその言い方、腹が立つんだよ!いちいち過去を気にしてんじゃねぇ!
俺は、俺達兄妹は…あの襲撃事件以降しか、兄ちゃんを知らねぇんだ!
戦わなくてもいいから…未衣子の…側に、帰って来てくれよ!」
俺の怒りは悲しみに変わった。
23/37ページ
スキ