14・忘却の日(終)

未衣子は赤髪の女性についていた。
武人が観た10年前の映像では、女性がずっと未衣子を抱えていた。
明るいだけの何もない空間では、10年前の襲撃事件の映像も写真も確認できない。

でも、確信はあった。10年前、俺は4歳で、兄貴は7歳。
自分に降りかかる怖い過去は記憶に残る。
「俺、実はたまにフラッシュバックするんだ…。爆発する遊園地から必死に逃げている自分を…思い出して。」
「そうだろうね…。俺も家族総出の遊園地は覚えていた。楽しさも災いもはっきりと。
お婆ちゃんが表情を凶変するから、俺は振り返らなかっただけ。
ですが…俺達の母親に何の関係が…?」
ぼやけた姿の武人兄ちゃんは、ニヤリと笑った。

遂に未衣子が一生抱えてきた《同じ夢しか見れない現象》の謎を、兄ちゃんが語った。

『君らの母親はな、実は火星人やった。
クーランが姉妹で捕らえて、過酷な躾を受けていた。
…俺にあてがうつもりやったんやろう。片方だけ直接会ったし。』
「じゃあ、もう片方が地球へ逃亡したんですね?」
『俺に会った女はすぐ息絶えたからなぁ…。
彼女らはHRではなく、ただの異星人。俺らに抗う力は持ってない。
だから片方を逃したんやろうな、姉妹同士計画を立てて。』

まだ《夢》の仕組みは語られていないが、俺と兄貴は驚きで喋れなかった。
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