14・忘却の日(終)

光が放たれてから、少しだけ時間が経った頃。
『もう大丈夫や。目は痛くなれへんで。』
武人兄ちゃんがそう言ったから、俺達は光が消えたんだと解釈した。だから、腕を下ろした。
下ろしてから最初に見たものは、身体の線がぼかされている、普段着の武人兄ちゃんの姿だった。

「え、何だよ…それ。」
俺達は武人兄ちゃんの今曝け出している姿を見て、絶句した。
輪郭がぼやけているだけじゃなくて、足の下が…。
『ああ、これか?
まあ色々やらかしてもうてな…一部しか出されへんかったんや。』
「ヘラヘラしている場合ではないだろう!今どこにいるのだお前は!」王子が怒りながら武人兄ちゃんに向けて言った。

兄ちゃんの笑みが消えた。
どこか哀しげな表情で、俺達を見つめていた。
『もう居らんよ、ここには。』
「何…?」
『探しても無駄やって、同郷の人に言うといてな、王子。』

武人兄ちゃんは王子に捜索を止める事を促した。
でも、王子を含め、兄ちゃん以外の全員が納得していない。
『ここにはいない』とは、どういう状況なのか…。
何を意味するのかはすぐにわかる。
それを否定する自分達の意識があった。

状況を理解できるのに、理解を拒みたい自分達がいた。
必死に、俺達は説得を試みた。
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