14・忘却の日(終)

未衣子の件で、すぐに帰宅できなかった。

アレックスさんは「未衣子の脳から《武人兄ちゃん》の記憶が抜け落ちている。」状態だと説明した。
説明不要かもしれんがともこぼしていた。
言われてみればそうだろうな。
俺達家族や[ラストコア]の人達、過去の敵勢力まで、全部覚えているのに。
ある特定の人物を忘れるのは記憶喪失になるのか…?
俺達は不思議に思っていた。

「このまま手続きを済ませて帰宅も可能だが…個人的には彼女を分析して結果を取らせたい。
兄弟である君達に滞在だけでもしてもらいたいが…。」
アレックスさんからのお願いだ。俺達は互いの顔を見合わせた。
これからどうするのか、話し合いを始めたい気分になった。

アレックスさんは察したのか、滞在への助け舟を出した。
「俺からの頼みだ。君達の家族に連絡するし、学業の面倒にも対応する。志願兵は訓練に取り掛かるが…自由に参加してもいいぞ。」
俺達の、妹以外の悩みを取り払うつもりだ。
原因不明なままモヤモヤするのはしんどいから、俺達は滞在を引き受けた。

「お願いします。未衣子の側には、なるべく離れないよう心がけます。」
「身体に異常はないから、基地内は迷惑行為以外は自由にさせていいぞ。退屈するだろうからな。
ただ、夢をノートに綴るだけは欠かさんように。」
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