13・奪還の日

搬入口突破前には敵の追手がなかった。
突破後は狭い暗闇の通路ばかりが広がっていた。
本当に敷地内を守りたいのだったら、通路内にトラップがあってもおかしくはないはずなのに。
『そうですね…。逆にここまで何も攻めてこないのは、不気味に感じますが。』残存兵の率直な感想だった。
『戻りましょうか。遠回りになりますが、別ルートを辿るしか…。』

「大丈夫です。」私が言った。
『いや大丈夫じゃねぇだろ?何もないんだぜ?』
「違うよ。《行き止まり》の壁に耳を傾けて?」
『聴力の解析データかな?』
和希兄ちゃんがコックピットのパネルを操作していた。
一方で、2人の残存兵達も《行き止まり》の壁に耳を当てていた。
『…なるほど、かすかに何か聴こえてきますね。』
『え?なんだよ、とうとう敵がきたのかよ!』
勇希兄ちゃんはキョロキョロと左右を見ていた。
『勇希、今からコレを開け。聴力解析データだ。』
『聴力?』
勇希兄ちゃんも首を振るのをやめて、同じようにパネルを操作した。
『…すげぇグラフの振れ幅あるなぁ!』
確かにグラフの変化が激しいのは認めるけども…耳の方も敏感になって欲しいんだけどなぁ。勇希兄ちゃん。

『地球産のロボは精密な解析ができるのですか?』
残存兵達は驚いた。
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