13・奪還の日

なので彼は『自慢の息子』、ラルクこと武人に最後の命令を下した。
『撃てよ、その銃で俺の息の根を止めろ。』
「最初からそうやった。お前をあの世へいかせた後、俺も後を追う。」

クーランの、機械に蝕まれて妖怪のような両目が大きく開かれた。
『お前さんも…正気か?』
武人はフッと笑みを浮かべた。
「何度も細胞分裂と破壊を繰り返した身体は、長く保たないんだ。
ロボ形態にならなきゃ済む話だったが、なかなかうまくいかなくて。
あとは…お前に入れられた劇薬の効果も聞いている。」
『ま、待て!解毒の在処を…!』
クーランの声はここで途切れた。
右手のショットガンで、武人はクーランの息の根を止めていた。
クーランは、目と口を大きく開けたまま、2度と動かなかった。
この飛行グモも、所々に爆発が発生しており、墜落も秒読み状態だった。

「呆気ない、30年やったな…。」
武人はゆっくり歩いて、ノイズまみれの映像を確認した。
巨大グモの影響で真っ黒な荒地と化した、火星圏タレスの出港口。
他のモニター画面からは、《DANGER》の文字がブリッジのあちこちで点滅していた。
アラームの音も騒がしく響く。
武人は脱出をせず、ただモニター前で立っているだけだった。

「…達者でな。」
飛行グモは爆散した。


☆つづく☆
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