13・奪還の日

☆☆☆
クーランの人生の中で、喚き散らす程の慌てぶりは今回が初めてだった。【パスティーユ・サニー】が突撃した時に、動力エンジンが爆散してしまった。
ノイズが入りながらも辛うじて起動しているモニター映像から、クーランは察知していた。
『ぐっ、配線を繋ぎすぎてしまったか…!?』
自身と繋がった配線が絡み合い、クーランは自由に操作できなかった。
悪戦苦闘している最中、彼はとある人物を目撃してしまった。

クーランの操縦席として使用したブリッジの、入り口の扉が破壊されていた。扉の破片を跨いで入ってきた男は、黒いショットガンを持参していた。
「[フィルプス10]、10年前にお前が地球降下した時に利用した船やったな。」
これは男の、クーランの『自慢の息子』の声だった。

『ラルク…』
「お前があの時襲撃したお陰で、俺はこの船がトラウマになってんねん。そんなんと共闘させるとか、やっぱりお前は狂気の研究者やな。」
クーランの答えはなかった。
「それともあれか?俺を使役するだけやって、背後から俺を倒そうとか思ったんやろ?側に置きたいなら、細菌を投入せえへんもんなぁ。」
『…どうやらお前さんも、賢くなり過ぎたなぁ。』
へへへ、とクーランは渇いた笑い声を出した。
彼に生きる気力は残されてない。
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