13・奪還の日

【サニー】の全身が燃え上がっていた。
エネルギーの残量はまだ6割は残っている。
これならフルパワーで突破しても、帰還まで余力を残せる。

『うおおおおお!!』
勇希兄ちゃんの雄叫び。【サニー】は右手の拳を前に出す。
コックピット内の速度メーターの数値が頻繁に変わる。
『ガキ共!調子に乗るなぁ!』
飛行グモ、必死の糸攻撃。
実際のクモのように、糸は網を作って【サニー】を捕えようとした。

でも、【パスティーユ】の中で鈍足の【サニー】でも、フルパワーなら瞬間移動もこなせるんだ。
素早い動作で網の目を抜けて、攻撃を回避していった。
糸攻撃の影響で回り込んで近づく形を取ったので、多少の時間ロスはあった。

それでも、飛行グモの腹部分を確実にぶち破る事はできた。
飛行グモの内部構造なんて、どうなっていたのか覚えてない。
一瞬にして突き破っていったから、知る余地もなかった。

でも、それでいいんだ。
私達が武人兄ちゃんに言われた内容は、飛行グモの動力エンジンの破壊。それが終われば先に帰還しろという指示だった。
腹部分をひたすら突き破っただけだけど、兄ちゃんにはそこがピンポイントだと認知してたんだろう。

だから、私達は帰還した。
兄ちゃんの事は気掛かりだったけど…。
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