13・奪還の日

☆☆☆
『クーラン…。まぁあれでへばったとは思えへんけどな。』
『やはり、あの男ですか?』
『そうや。広すぎるから誰か居るとか想像するやろうけど、施設内の管理なんかは自前のAIに任せたりしとんねん。
だから、あの研究所は奴の居城で、奴以外の民はおらんねんや。』
そうだったんだ…。
あのへたっていたおじさんがクーランって人なんだ。
夢の中でニヤニヤ笑ったおじさんと、顔つきがそっくりだったのは覚えている。

宇宙船へ格納される前に、コックピット内のアラームが鳴り響いた。
武人兄ちゃんと同じ考えで、確かにおじさんが引き下がるとは思わなかった。
エネルギー不足の問題がなければ、そのまままっすぐ巨大グモへ立ち向かうのに。

『我々はこのまま参加します。御二方はまず応急処置を!』
『いや、俺もこのまま行く。【パスティーユ】の調整だけやってくれ。』
『何を仰っているのですか!クーランに悪い治療でも施されたのでしょう!?』
『悪い…治療?』『毒でも入れたとかか?』
今の勇希兄ちゃん、勘が鋭くなっている。
私も同じ勘が働いていた。
クーランが武人兄ちゃんの身体に毒を仕込んだんじゃないかって。

私達兄妹はともに処置を受けようと説得した。
せっかく救出したのに、帰還できないのは悲しいから。
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