13・奪還の日

言い返す気力がない、というのはなかった。
脱出を計画しているのだから、まだ体力は残っていると武人は信じていた。
ここで害薬投与した悪魔と話を交わすのは、体力を削る羽目になると彼は判断した。今は喋らず、機会を待った。
脱出して帰還できるだけの余力があればいいと武人は思った。

部屋内にアラームが鳴った。
ベッドと反対側に位置する通信モニターからの音だった。
何だよ、とぼやきながらクーランはモニター前に向かった。
アラーム以外の音は流れず、要件を知るにはモニター画面の文字を読むしかない。
地球では見かけない記号のような文字を、クーランはスラスラ読んだ。
「出港口が破壊されて塞がれた?ったく、他の経路を使えばいいだろ?後処理は適当に済ますから存分にやれ、と。」
クーランは文字を読み上げた。
後に画面前のパネルを数回操作して、音声入力で文字を打ち、その文章をメールのように送信した。
「少しは頭使えってのによ、なぁラルク。」
武人の本当の名を呼んだクーラン。

しかし、彼の平常心が崩れ去る時がやって来た。
2度目のアラームによって。
「チッ、うるせぇなあ…。」
2度目は送信後すぐに鳴らされた。
よってクーランは振り返るだけでモニター画面の文字を読み取る事ができた。
同じように、声を出して読み上げた。
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