13・奪還の日

「【パスティーユ】だけですよ?他は無人AIばかりですので…。」
『我々HRでも、解析技術に長けた者は少ないので…。』
『HRが生命体、と認識していればですね。』
和希兄ちゃんに小話が聞こえてみたい。

【パスティーユ】の高性能さについては、今は深く触れる話題ではない。
これからどんな行動をとって、武人兄ちゃんを救出するのかを決めないといけない。
「解析データでも十分示しているみたいです。…この壁を壊しませんか?」
『え?』『はあ!?』
私の提案に残存兵の1人は首を傾げるだけだったが、私の下の兄はいつものように大袈裟に反応した。
「【サニー】の状態だったら、この壁程度なら壊せるわ。」
『できるが…これで破壊活動は2回目だ。エネルギーの消費もかなりの量になる。』
和希兄ちゃんの指摘通りで、エネルギーの残量メーターもあと6割だ。
《行き止まり》の壁を壊せば、残り半分を切ってしまう恐れがある。
救出後の帰りの分も確保したいと思う気持ちもよくわかる。

でも、他に方法はない。
別ルートの選択は可能だけど、また振り出しから再出発になる。
それだと、武人兄ちゃんの救出にかなりの時間を費やしてしまう。
《搬入口》ルートの選択でも賭けに出たんだ。
今更怯えなくてもいいだろう。
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