12・潜入の日

ハイビスカスのように花びらが大きな花ではなく、星の形を彷彿とさせる小さめの花の群れだった。
星から離れた軌道上の宇宙船から眺めているので、実際は私達の身体より大きな花かもしれない。

「綺麗…。」
声に出してしまうほど、私は白い花の群れに夢中になってしまった。
「ペンタス…という花かな?」「は?」
「花の名前だけど…火星だし、別の花かもしれない。」
和希兄ちゃんが名前を推測していた。
そういえば、和希兄ちゃんはスケッチの為に植物園に足を運んだんだっけ。
兄ちゃんは同じ部活の人に絵を見せたかったみたいだけど、どうなったのかなぁ。
和希兄ちゃんは真面目だし、数枚は仕上げて絵を見せているんだろうなぁ、と勝手に想像していた。

しばらく花の群れの純白な美しさに、私達は見惚れていた。
じっくり眺めていたから、おそらく異変にも早く気づけたかもしれない。

群れの内の1輪の花が、中心の上でくっつくように閉じられた。
布を絞るように、閉じられた花びらは時計回りにクルクルとねじられた。
ねじられた花びらは再び開花したのだが。

花びらにシワはなかったけど、輪郭周りにギザギザ模様が見えて。
花特有の雄しべと雌しべの部分が無くなり、代わりに尖った透明の宝石が露わになった。
「え?」私達は動揺した。
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