12・潜入の日

口ではこう言ったけど、多分無意識に怯えていたかも。
武人兄ちゃんを思い出して。

だから話を逸らすように、映像のタッチパネル機能で遊んだ。
兄達はこれ以上気遣う言葉を使ってこなかったけど、代わりに私の両肩にくっついてきた。2人とも男の子だから、体重で重く感じる。
でも心底は私が怯えているとわかってくれるから、多少の負荷に口出ししなかった。

「すげぇ真っ黒だよなぁ。」
「武人さんの髪の色を表現しているようだな。」
「所々の赤い点がチカチカして目が痛いぜ…。」
「照明用には使いたくない色だな…。」
兄達が星の外観の感想を色々言っていた。
ありふれた第一印象の感想が飛び交う中で、私はタレスの外観を隈なく観察していた。
すると、意外な物を発見したんだ。

地球の赤道ぐらいの位置に、白い物が見られたんだ。
「何これ…?」
私が首を傾げるような物言いをすると、兄達も私の反応が気になり、同じ箇所を見ていた。
「すげぇ眩しく光ってて、逆に酔いそうだぜ…。」
「そこまでは大袈裟だけどね。未衣子、拡大できる?」「いいよ。」
私は映像のタッチパネル機能を数回駆使して、該当部分の拡大を行った。かなりのズームインだというのに、輪郭の境界線がくっきりとしていた。
白の正体は…花だった。
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