12・潜入の日

「見た事ない星がたくさんあるし、退屈しないよ?」
私は軽く身体を捻る運動をする勇希兄ちゃんに言った。

「だって俺さぁ、プラネタリウムなんか鑑賞して喜ぶ柄じゃねぇし…。」
「勇希は身体を動かす方が好きだからな。」
「でも兄ちゃんの勉強には最適じゃないの?中間テスト、点取れた?」
私はちょっかいをかける意味合いで勇希兄ちゃんに言った。

予想通り、兄ちゃんはムッとした表情になった。
「赤点は取ってねぇよ!」「でも平均点スレスレだよね?」
「大体、中学で宇宙の問題って頻繁に出ないだろ!」
「未衣子、あんまり勇希を揶揄うなよ。」
「わかってるわ。」
和希兄ちゃんに軽く注意された私は、これ以上勇希兄ちゃんにしつこく言うのをやめた。

「今は少ないけど、今後宇宙旅行が活発化したら、義務教育の一環として加わるんだろうなぁ。」
「ちょ、兄貴まで怖い事言うなよ!」
「ははは。でも、勉強はやった方がいいぞ?視野が広まるしな。」
「う…帰ったら、ちゃんとする…。」
勇希兄ちゃんは小さめの声でモゴモゴ言った。

発言をはっきり聞き取れなかった私は、イスから立ち上がり、窓がわりの映像を間近で拝んだ。
手で触れるとタッチパネル機能が作動し、景色の拡大や縮小ができた。これで私は退屈しなくて済むかな?
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