12・潜入の日

☆☆☆
恐ろしい程に、目的の搬入口までの道のりで、敵の襲撃はなかった。
敵のHRは、初めに確認した白い花の群れ周辺でしか、出現しなかった。

HRでも普通のロボでもいいけど…最低限の人員は監視係として必要だけどなぁ。
私と同じ事を、勇希兄ちゃんが漏らしていた。
『勇希が侵入対策について指摘するなんて、珍しいな。』
『え!当たり前の事だろ!』
『初歩中の初歩ですね。もしくはクーラン殿に余程の監視技術をお持ちであられるか…。』
兄達の会話は残存兵達にも丸聞こえだった。
別にうるさいと、咎められたりはなかったけど。
今は作戦遂行中だし…。

注意は他の残存兵の人がしてくれた。
『これからはなるべく静粛に遂行しましょう。作戦に関係する内容は構いませんが、音量は下げた方がよろしいかと。』
この注意に対して、全員が同意した。

同意しただけで、全く話合いがない訳ではなかった。
話合い云々より、解決を急ぎたい問題があった。
搬入口周辺はかなり寂れていた。
火星圏タレスは地球のように、大気圏の概念はなかった。
星の外観の黒色の正体は、多重構造の壁だった。
テレビなどに使用されている液晶みたいな物質で…星の内外での景色が変わる。
宇宙からだと黒く丸い星が見えて、星の中では空模様を確認できる。
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