12・潜入の日

宇宙進出前、武人兄ちゃんの知るクーランの人物像も聞いていた。
そのおじさんは体を動かすのが苦手で、いつも部屋に引きこもり気味だったと。
だから研究所内でも、お手入れの施しがないボロボロのフロアは昔からあったと。
その内の1つが、今回の通る予定の、寂れた搬入口なのだ。

ところがこの搬入口にも問題点があった。
武人兄ちゃん救出の道のりが、搬入口に侵入以降は不明な事。
迷路のような状態になり、下手をすればトラップに引っかかる恐れがある事。
実は私達兄妹はもちろんだけど、土星の人達も、ビウスの残存兵達も搬入口の出入りをした経験がない。
つまり、搬入口をルートとして採択したのは、一種の掛けを選ぶ羽目になるのだ。

一か八か。
搬入口より先の救出活動は、運任せしかない。
残存兵達は潜入捜査に長けた人がいて、ある程度は信頼できそうだけど。

胸の奥が痛む。
生存できるかの不安と、兄ちゃんの心配でぐちゃぐちゃになった。
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