12・潜入の日

クーランは肯定すると、スッと白衣のポケットからスイッチを取り出した。

「何や、それ。」
「賢いお前なら理解できるだろ?
家出したお前を躾けたいって言ったら、尚更。」
「俺はもうアラサーのおじさん突入してるんやで?体力も落ちとるし。若い子らの育成を進めたらええんとちゃうの?」
「その先導に立つもんが必要だろう?」
そう言ったクーランは妖しい笑みを浮かべていた。

(ろくな事考えず、何か企んでいるな…。)
武人はクーランの動きを警戒した。
しかし、手足とお腹周りの動作が封じられた今、何も行動を起こせなかった。

クーランの持つスイッチが、押されていても。
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