12・潜入の日

★★★
格納庫のジェット機はまだ飛んでいなかった。
外は宇宙だから、地球の中とは勝手が違うと判断してるからだろう。

「すみません!遅れました!」
水色のジェット機のコックピットに座る和希兄ちゃんが謝った。
相手はもちろん、モニター越しのアレックスさんだった。
『本来なら叱るところだが…お前達は宇宙戦は初めてだ。
今まで無事でこられただけでもありがたい。』
通路の時の放送のように、アレックスさんは怒鳴ってこなかった。

モニター画面に割り込みが入った。
格納庫にいる整備士さん達だ。
地球の輸送機で運ばれた時と違い、人が多かった。
地球の時は[ラストコア]との距離が近かった為に、スタッフさんの配置は少なめに設定されていた。
アレックスさんのAIロボも優秀なのもあったと思う。

武人兄ちゃんから聞いた話だと、宇宙を経験した数はごく僅からしくて。
だから私達兄妹や志願兵の皆さん以外にも、初めて上がる人もいた。
『君達、宇宙には驚くほど足場はない。下手すれば遭難しやすいだろう!
絶対に浮上用のエネルギーの確保と、地図機能の徹底的な活用を怠らないでね!』
警告の意味合いを込めているのか、整備士さんの声は張っていた。
その他、非常脱出の方法などの最終チェックが行われた。
かなり早足だった。
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