11・包囲の日

ジェームズは冷静に原因を推測した。
装っただけで、内心は宗太郎同様焦っていた。

『とにかく!今回できっちり終わらせろ!次避難しろと言ったなら、連合に抗議するぞ!』
回線は外交官の手により、強制的に打ち切られた。
不都合な事由を押し付ける人間に礼儀は不要と判断したからだろう。
宗太郎もジェームズも、外交官に対して怒りを覚えることはなかった。

「…相互理解は、難しいな。」宗太郎は小さく呟いた。
ジェームズの耳に届き、彼の肩に手を置いた。
「いずれはバレる時が来るし、国の偉いさんには知った方がいい情報だろうしな。宇宙進出が一般的になれば尚更。」
宗太郎はジェームズの手に視線を下ろした。

「君の言う作家や志願兵達がこぼしたとかは?」
「志願兵達は知らん。作家は知っているが…俺が口止めしたら彼女は口を開かないさ。約束を守る女だからな。」
そうか、と言って宗太郎は手から視線をずらした。
PC画面はアドレス一覧が表示されていた。
「処理するか?」
「今は進出を急がせる。しばらくは、他の[宇宙犯罪者]の動きはないようだ。あれだけの人数を倒せば躊躇するだろう。」
宗太郎とジェームズは、PCの近くから離れて行った。

オペレーターは迅速に、他の国の外交官との連絡を開始した。
交渉手続は、まだ時間がかかる。
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