11・包囲の日

カウントは駐在スタッフさんの声で刻々と迫ってきた。

『10秒前!』
あと少しで、私達はしばらく地球の地面に足をつけなくなる。
寂しいけど、武人兄ちゃんを取り戻す事を考えたら払拭できた。

『5秒前!…3、2、1…!』

発射!

駐在スタッフさんの一番高い声が耳に伝わった。
下からゴゴゴ…と音が聞こえる。
接続が切れて、ブースターに火がついて…ロケットが上へ登っていくんだろう。
振動が、私達の身体に伝わっていく。
真逆のジェットコースター、いやそれ以上の迫力を感じ取っていた。
ロケット内部は揺れていた。視界も安定していない。
私は静かにしていたが、勇希兄ちゃんはうう〜!と唸っていた。
一番怖がってるの、勇希兄ちゃんじゃないの?

この振動が収まる時はやって来た。
放送は駐在スタッフさんからロケットの操縦士さんに代わっていた。
声の違いですぐわかった。
ロケットの分離が開始され、私達の乗る宇宙船が表に出た。
ロケットは下側のブースター部分を外すと、残りの部分を真っ二つに綺麗に分かれたんだ。
ロケットの部分はこのまま、地球へ落下する仕組みである。
地球の被害については、事前に各国へ連絡済みだから心配ないとジェームズさんが言った。
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