11・包囲の日

和希兄ちゃんが聞いてきた。
私は正直に伝えたかった。
でもここではっきり伝えると、2人共戦闘に躊躇してしまいそうで…。

だから、今は誤魔化した。
「武人兄ちゃんが心配なだけだから、気にしないで。」
「兄ちゃんはこれから取り戻すんだろ?」
「その為の任務だ。踏ん張ろう。」
2人の兄は武人兄ちゃんの詳細について、深く触れなかった。

バレずによかった、という安堵感と。
黙っていてごめんという罪悪感。
私の中には2つの感情が混ざり合った。

これ以降、私達は静かにシートに座っていた。
もうすぐ、ロケットの発射時間だ。まずはこの関門を突破しないと。
ロケットを宇宙に飛ばさなければ話にならないから。
クーランのいる火星圏タレスまで届かなくなるから。

『まもなく発射のカウントに入る!』
座る前にゴツい宇宙服を着ていた私達は、ヘルメットの通信機能から放送を聴いていた。
[ラストコア]には宇宙進出でも基地に駐在する人もいた。
ロケットを安全に飛ばす為に、外側視点に立つ人が必要だから。


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