11・包囲の日

武人の入った檻は、大通りの向かいの建物にぶつかり、動きを止めた。
「ぐっ!?」
弾かれるように彼は衝撃を受けた。
おでこの上から、血が流れていた。
檻の中で揺さぶられた彼は、思うように起き上がれなかった。

悪い事は重なりやすいもので。
真っ暗な檻の中は、ガスを充満しやすかった。
薄い霧のような煙はガスだと武人は判断した。
両手の位置は、鼻と口に移った。

(潮時やな…。)
彼はなんとかガスを吸わないように抵抗したが、小さい穴しかない檻の中では限界が来る。
まぶたがゆっくり、閉じられていく。

(土星人と金星人の助けもある…進出は可能や。頼むで…皆…。)
19/30ページ
スキ