11・包囲の日

最初から武人は、この街の違和感に気づいていた。
(こんなスラム街やったら…酒場の1つや2つありそうやのに、見当たらんのが引っ掛かったんや。)
建物の隙間は彼の後ろにも出入り口があった。
彼が立ち止まって、数分が経過した。

カンカンカン、と軽い音に聞こえたが、立派な銃声だった。
銃弾の跡が付く場所を、武人は察知していた。
即座に前へ飛んだ。クルッと1回転して着地。
姿勢を少し屈んだ状態で立っていた。
先程まで背に向けていた側の隙間の出入り口に、人影は見当たらない。

(上から撃ったんか?せやけど…!)
同じ軽い銃声が、彼の後ろから聞こえた。
着地の仕方も姿勢も同じやり方で行った。
武人が出入り口として利用しようとした側だったが、こちらも人影はない。
(やっぱり上やろうけど…)
彼はもう一度空を見上げた。

3度目の銃声。銃弾が律儀に上から降ってきた。
これも武人は軽いステップでかわしていく。
(姑息やなぁ…!)
3度目の場合も、すぐに途絶えた。今のうちに再度上を見上げる。

人の姿を…視認できなかった。
(おかしい…屋上にはおるやろ…!)
武人はありえない物を目視した。
建物の隙間…この場合は広めだったが、約3メートル程度の幅だった。
そこに落ちてきたのは、神社の巨大な鐘みたいな檻。
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