11・包囲の日

☆☆☆
パーティーが順調に盛り上がりを見せている最中、武人は会場を出ていた。宗太郎にすぐ戻る、と耳打ちして。
彼は護衛の付き添いを促したが、武人はこれを拒否した。

外の空気を吸うには、会場の通路で止まるだけでは物足りず。
武人は会場の玄関の扉を開いて、真っ暗な外へ出た。
会場の外はクラシック音楽とは無縁そうな、スラム街が近くの離れた場所に存在した。
敵の襲撃の可能性もあり、パーティ会場の指定をあえてここにしたのだ。

武人が意識していなくても、街の中に訪れる事はできた。
夜の影響もあって、街中は静かだった。
酒場でもあれば、フラッと立ち寄れたが。
(都合よく、飲めるわけないわな。)
仕方なく武人は歩き、5階建ての建物同士の隙間に入った。
片方の壁にもたれ掛かった。

ハァ、と武人は息を吐いた。
(どこまで、保つんやろうな…この身体。)
武人の顔には少し、汗がかかっていた。ポケットのタオルで、流れた汗を拭き取った。

武人の身体は、限界まできていた。
クーランに『ラルク』と呼ばれ、物心ついた頃には他星の制圧に参戦させられた。事実上、11の星を潰してきた。

潰した星全てを力押しで粉砕したわけではない。
民にとっての生命線を破壊し、自然に壊滅させた星もある。
武人はHRでも頭の良い方だった。
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