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お訪ね者

あれから、アーサーさんのことが頭から離れない。本田様に会いに来た海外の美しい方。人形のような作りの顔に、可愛らしいパーツたち。この日本じゃ、なかなか見れない作りの顔。よく通る低い声。落ち着きのある、余裕たっぷりの言葉遣い。それが、私のドレスを褒めた。こんな私のドレスを。今までは、腫れ物を扱うように私を見ていた、言葉をかけていた人々が当たり前だった。だから褒められるなんて、美しいなんて言われるとは思わなかった。紳士的なあの人は、本田様になんの用なのだろうか?前もよく来ていたのだろうか?

あの人のことを知りたい。


翌日、私は決心して本田様の家に行くことにした。本田様こと、我が国日本様のもとへ。
和風造りの大きな家。私はドキドキするのを抑えてノックをした。
コンコン。
やけにその音が頭に響いた気がした。本田様は出てくるだろうか。留守だったりしないか。急に不安が押し寄せて、帰ろうかと踵を返したとき、「はーい」と本田様の低い声が響いた。私は扉に向き直した。ガラガラと戸が開いて、黒髪の本田様が出てきた。本田様は私を見るなり笑顔になった。
「どうもこんにちは。瑪亜さん」
艶美な優雅な笑み。
「こ、こんにちは」
本田様はドレスを見るなり眉を下げた。
「可愛らしい格好をしてますね。今度は和装なんてどうでしょう」
和風ロリータ、可愛いだろうな。じゃなくて、
「あの!聞きたいことがあって!」
そう私がテンパって声をあげると本田様は驚いたように目を開いた。
「上がってください」
本田様は袖を口元にあてて笑っていた。私は連られるがままに本田様の家に上がった。

茶の間に上がってちゃぶ台に本田様は緑茶を置いた。本田様は私の目の前に正座し、「どうぞ」と私にお茶を差し出した。私も正座し、緑茶を1口飲んだ。美味しい。
本田様も1口緑茶を飲む。
「それで、聞きたいこととは?」
私は背筋を伸ばした。
「あの、昨日の……本田さんのお客さんについて、知りたくて……」
「昨日の?」
「あ、あの、金髪の……」
「あぁイギリスさん?」
イギリス……さん。
あぁ、あの人も国だったのか。
「昨日は私の文化を知りたいと訪ねて来ましたよ。お会いに?」
「は、はい。本田様の家はどこかと。アーサーと名乗っていました」
「あぁ。そうでしたか」
本田様はそう言ってお茶を飲んだ。私も口の中が乾いてお茶を飲む。紅茶ばかり飲んでいたから気づかなかったが緑茶も美味しい。
そうか、あの人はイギリス様なのか。私の1番好きな国だ。
「瑪亜さんの好きな国でしたよね?」
本田様は私の心を見透かすようにそう言って微笑んだ。私は目を見開いた。じわじわ顔の中心に熱が集まるのが分かる。
「好きです」
国に一目惚れなんて、馬鹿げてる。
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