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日常

 メアは考えていた。どうにかしてこの城から逃げられないか。夜になってペローナに案内された部屋で考える。ノックが聞こえて思わず身構えた。ガチャっと扉が開く。そこにいたのはマリモだった。
「おい、」
 マリモは言う。
「なに」
 メアはそう返した。マリモは視線をあちこちに動かしながら言葉を繋いだ。
「さっきは悪かったよ」
 さっきとは胸ぐらを掴んだ時だろうか。マリモは罰が悪そうに頭を掻いていた。メアはマリモに問う。
「名前はなんという」
「俺か?俺はゾロ。ロロノア・ゾロだ」
「ピンクの髪の女は?」
「あ?あいつはペローナだ。聞いてねぇのか?」
 そういえば自己紹介していたような。少し前のことを思い出す。部屋に案内してくれた時。ペローナは「私はペローナ。この部屋はメアのだ!」なんて言ってたな。
「鷹の目は……流石にわかるか」
「ミホークでしょ?」
「そうだ」
 ゾロとは少し話した。ゾロはしばらくして部屋に戻ると言っていた。だからメアも軽く手を振った。
 本題はここからだ。ミホークの部屋を探す。しばらく薄暗い廊下を歩く。見るからに雰囲気の違う部屋を見つけた。メアはそっと気配を消して部屋に入った。月明かりが差し込む部屋にミホークはベッドに横たわっていた。こう見ると無防備で呆れる。世界最強の剣豪が。メアはミホークに近づいた。そしてベッドに乗り、ミホークに馬乗りになった。ミホークは「何のようだ」とその猛禽類のような瞳を光らせて尋ねる。やっぱり起きてたか。メアに気づかないはずもない。
 メアは紅い瞳を光らせて艶美に笑った。
「少し遊ぼう?」
 ミホークは眉をぴくっと動かして口角をあげた。笑うとますます悪魔みたいな男だ。
「この俺とか?」
「えぇ」
「フフフッハッハッハッ!」
 ミホークは声を上げて笑った。流石のメアもそれには驚いてミホークから一瞬離れようとした。ミホークはメアの腕を掴んだ。
「この俺を油断させてどこへ行く気だ?」
「ッ!」
 メアの作戦はミホークには筒抜けだった。メアの作戦、それはミホークと体の関係になってミホークが疲れて眠る時に脱出しようという作戦。
「海軍本部か?」
「……えぇ!」
「安心しろ。俺も優しくない。お前のことはさっさと海軍本部に引き渡すつもりだった」
「だった?」
 何故過去形?
 ミホークは口角をあげて猟奇的に笑った。
「海軍本部に連絡して聞いたのだ。お前を海軍本部へ呼ぶ理由を」
「どんな理由だったの?」
「お前の悪魔の実のことだ。それを利用したいらしい。だが俺もお前を気に入った。だから離す気はない」
「随分情熱ですこと。私を気に入った?一体なぜ」
「丁度話し相手が欲しかったところだ」
「それなら二人もいるようだけど?」
「あの二人は喧しくてかなわん」
 メアはため息をついてベッドに腰掛けた。ミホークはさっきより優しい顔をして目を細めた。
「海軍本部へは連れてってやる。ただし絶対にお前を離さん。……今日はもう寝ろ」
 メアはミホークにどこが気に入られたのか考えながら自分部屋に戻ることにした。ミホークが海軍本部へ連れて行ってくれるなら案外悪くない話かもしれない。
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